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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 213

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冬の暮れ、寒々とした夕日が空を赤く染めたころ、執務室では決裁書類の山に囲まれていた伯爵は、束の間の休息を取っていた。

「ふむ……、やっと半分か。

それにしてもクリスめ、家宰と組んで大量の決裁をこちらに回してくるとは……」

そう言ってはため息をついていた。

『貴方も暇になると余計なことを考えるでしょう。

忙しくしているのが一番です。領地のため、領民のため頑張ってくださいな』

朝一番で書類の束を持ってきた妻は、満面の笑顔でそう言い残すと去っていった。

内政は妻と家宰に一任してあるはず……

訝しがって書類に目を通した。

弓箭兵育成計画書と書かれた書類には、新規射的場建設候補地、及び建設費用概算、それぞれの建設予算、運営人員計画、運営費用概算、人員採用計画……

それらだけで膨大な量だった。

確かに……

昨年の夏、儂が指示したものだ。

新領地の経営に忙しく、すっかり忘れていたが、調査と計画はきちんと行われていたということか?

先の合同最上位大会で、儂は大恥をかいてしまった。

トーナメント方式というものが採用され、最下位が分からない対戦方式に変わったことを、心から感謝したものだ。

正直、その前の大会で最下位だったハストブルグ辺境伯に完敗するとは……、思ってもみなかった。

前回一位から実質最下位への転落、この衝撃はとてつもなく大きかった。

『3年後には優勝を狙えるよう、優先して育成を進めよ』

帰領後に早速、そう命じたのは覚えている。

『優先すべきは新領地の安定と、統治機構の構築でしょう』

妻からは、そう苦言を言われたことも。

だが、私は次回こそ雪辱を果たしたいと思っている。

わが家は武勲を以て領主に任じられた家だ。なのでこれは、ソリス家の鼎の軽重が問われている重大事だと考えている。

『ソリス伯爵は、次男の武勲で子爵号を得、長男の武勲で伯爵号を得た。子宝に恵まれた果報者よ』

一部の貴族の間で、そう囁かれて嘲笑されていることは、儂も知っている。

いくら否定しても、先の大会はその噂を裏付ける結果になってしまったことも否めない。

儂もちょこっとだけ、息子たちの力で地位が押し上げられたことは自覚している。

だが、このままでは立つ瀬がない。

断固たる意志で、妻に宣言した結果が、この書類束だった。

うん、頑張って目を通そう。この休憩の後に……

気分を変え、もうひとつの書類の束に目を通した。

領内兵力拡充計画書……

それに、辺境騎士団割り当て達成計画、新規採用計画、俸給案、騎馬充当計画、武具充当計画……

それらに関わる膨大な量の決裁書類。

確かに……

これらも南部諸侯会議のあと、募兵が思ったよりも進んでなかったため、優先対応を指示した内容だ。

一昨年の夏、論功行賞のあと王都にて行われた割り振りを受け、対応は進めていた。

だが、辺境伯から割り当てられた定員、辺境騎士団支部へ300騎を供出することはまだできていない。

儂もそこは頑張った。

でも、新兵ばかり200騎を送り出すのが精いっぱいだったし、ちょっとだけ頑張った自分を褒めていた。

ところが、だ!

あの仏頂面の男は早々に定員を満たし、次男も2.5倍の増員を既に満たしている……

会議の席でそれを知った。

非常に不味い、本当に不味い!

ここに来て一気に焦りを覚えた。

忠勤を疑われるかは置いておいて、ますます噂が真実味を帯びてしまうではないか……

だが、急速に拡大した領地に比して、治安維持に捻出する兵士も膨大になった。

今派遣している者たちですら、次男の厚意に甘えているのだ。

『育成はこちらで行いますので、新兵で構いませんよ』

その言葉に安心しきっていた。

確かにこの先、兵自体は集めることはできるかも知れない。

だが、騎兵となると問題は軍馬の調達だ。

あの大会で儂の立てた壮大な計画は、途中で全てが狂ってしまった。

せっかく次男が、王国東部から来賓で来ていた諸侯と、その随員たちを紹介してくれたというのに……

彼らの領地、東部地域は王国でも有数の馬の産地だ。

儂も彼らと繋ぎを付け、優先的に馬を回してもらうつもりでいた。

作戦はいつもの通り。

随員たちと夜の視察団を結成し、胸襟を開いてお互いの親交を深めるというものだった。

だが最終日、何故か街の燈火は消えなかった!

無念の極みだった。あの時の悔しさは今も忘れない。

そして儂は灰となって、虚しい朝を迎えた。

だが、あの時仏頂面は、晩餐会でちゃっかり交渉を取りまとめ、多くの軍馬を確保しているというではないか!

あの気難しい男がどうやって?

……、娘か! 次男の妻となる彼女は、私から見ても非常にできた女性だ。

戦場でも活躍し、大会での雄姿も見事だった。

娘に仲介させ、交渉を取りまとめるなど、子供の威を借りる見下げた奴だ!

貴族として恥ずべきことではないか!

……、ん?

いや、家というのは家族で盛り立てるものだ。時には子供の力に助けられることもあるだろう。

そうだ、そこは訂正すべきだな。

ただ、ここでの出遅れが、今の失態に繋がり、儂の悩みの種となっている。

そうだ! 今は休憩中だ。気分を変えよう。

気を取り直して、更に別の書類の束を……

新領地受付所配置計画……

これは面倒なので……、いや、特殊な内容なので娘のクリシアに丸投げ……、いや、将来の学びのために全てを任せていたはずだが……、何故こんなにも早く書類が揃っている?

到底、まだ学園に通う娘のできる所業ではないはずだ。

まさか王都で、優秀な文官でも確保したというのか?

これでは計画の遅延が、まるで決裁を滞らせた儂の責任みたいではないか!

しかし、受付所設置候補地って、こんなにあるのか! 今の人員では到底賄い切れないではないか。

人員採用計画、人員育成計画……

これでは、いつになったら運用が開始できるかわからんではないか。

儂は新規人材の育成で20名の者をテイグーンに派遣し、次男を通じてクレア殿に教育を頼んだ。

だが、長男は何と一気に50名も送っていたと、後で聞かされた……

ダレクの領地は、広さで言えば伯爵領となった儂の半分、人口でいえば半分以下だ。

そんなに必要だったのか?

儂の見通しが甘かったと?

受付所の価値を軽く見ていたと?

その多岐に渡る業務内容を余りにも知らなかったと?

受付所の仕事は、もはや行政府の機能を補完している、そう言っても過言ではない。

射的場運営、兵員募集、職の斡旋、領民管理名簿の作成、移住者対応など、あげてみるとキリがない。

そんな複雑な、統治機構の出先機関を作る発想は、誰が教えたのだ?

どうやったら思い至ることができる?

有能だが、よっぽど変り者ではないのか?

育てた親の顔が見てみたいわっ!

……、うん。それは儂であるな。

あ奴は昔から変わっておった。

子供のころから、儂より腹黒ではないかっ! そう思うことも度々あった。

うん? こちらの書類は何だ?

食料備蓄報告書、旧領義倉拡張計画書、新領地義倉建設候補地、建設費用概算、食料買い付け決済……

ええい、この忙しい時に誰だ!

……、いや、考えてみるとこれも儂か。

確かに、南部諸侯会議にて、次男が干ばつによる凶作または洪水による水害の危険性を発信した。

これまでもあ奴は豊作に凶作、水害被害や疫病の発生まで予見し、それらは気味が悪いくらい的中している。

諸侯会議の報告を受け、儂は食料備蓄の拡大と、投機用穀物の買い付けの指示をしていた。

だが新領地には、もちろん義倉もなければ食料の備蓄も全くない。

前領主たちが内政をなおざりにしていたことに他ならない。

そうなると、このままでは新領地の一帯は災厄に耐え切れない可能性が高い。

新たに領民となった者たちに無慈悲なことはできない。これは最優先で進めるべきだろう。

それに、投機用穀物の買い付けはとても大事だ。

もう10年ほど前になるか?

あの時も次男の提言に従い、豊作時に安値で買い叩いた穀物類が、翌年には高騰した。

儂はその時得た秘密の資金で、エストの街に密かに夜の社交場(娼館)を作ったというのに……

それもクリスに取り上げられて久しい。

今回の投機で再び隠し資金を増やし、新領地に密かに新しい社交場を作らねばならん。

今回こそ、計画を慎重に進めて……

そう考えると、全く手が足らんな。

最優先は、これらのことを差配し、管理監督する人手、文官の確保か?

だが、新領地経営のため、家宰は100名もの文官を新規採用したが……、すでに2割が職を辞している。

忙しすぎるだと?

ブラック労働だと? 何だそれは?

次男がよく呟いていた言葉で、文官たちもそれに釣られて使うようになった、そう聞いたが。

彼らが辞めた理由は儂のせいではない。

……、と、思う。

儂は、新領地の経営にあたり、旧領主の圧政に加担していたり、目の届かぬところで私腹を肥やしていた酷吏など、貪官汚吏の類は一斉に排除し、彼らの定めた宿弊を一気に廃した。

だが、家宰はこれに反対だった。

『多少の小悪党には当面目をつぶりましょう。目に余る者は排除し罰を与えますが、当面余力ができるまで、彼らには大っぴらに悪事を働けない程度に、圧力をかけるだけで良いのです』

だが儂はそれを許すことができなかった。

エストール領で不正を働く人間は、行政府にも代官にも、ひとりとして居なかった。

悪事を働く者、無慈悲な者が上に立った結果は、つい最近までのヒヨリミ領、10年ほど前のゴーマン領前家宰、そういった事例を見れば明らかだ。

そのため儂は断固として彼らを廃し、新領地には清風が吹き抜けるようにしたはずだ。

それと、文官たちが辞めていった理由が……

レイモンド、すまん! 儂だな……

ちょっとだけ反省しておこう。

今考えると、儂も昔は武勇に秀で、商才もあり、新進気鋭の領主として名を馳せていたはずだ。

なのに、どうして?

いつの間に儂の栄誉は地に落ちた? 特に家庭内で。

凶作で投機に成功するまでは良かった。その後か?

蕪男爵、芋男爵……、そんな風に呼ばれだしてから、何かが狂ってしまった気がする。

どこの誰かは知らんが、儂のことを正座男爵などと揶揄する奴もいると聞いた。

どうして儂はこんなに落ちてしまったのだ?

さて!

悩みは尽きないが、そろそろ儂も、真剣に内政に取り組まねばならんな。

早々に決裁を終わらせ、次男の築いた新しい街、イシュタルにも視察に行かなければならない。

そこには新しく夜の社交場も築かれているという……

そしてこの干ばつ対策も最優先だ。

特に投機用の穀物購入は最優先事項としておこう。儂の大望がかかっている!

思いを新たにした伯爵は、その日朝まで執務室から出てくることはなかった。

自らが招いた案件に関わる政務の数々は、彼一人でそう簡単にこなせるものではなかった。

ちなみに、彼の次男が築いた街への視察は、いつの間にか彼の妻が済ませており、伯爵が訪れる機会と言い訳は、既に消失していることを……、彼はまだ知らない。

ご覧いただきありがとうございます。

遂に前回の投稿で第200話となりました。

この先、残る二つの災厄、その後の世界に向けて邁進する予定です。

ここまで投稿が続けることができたのも、皆様の温かいご支援、いいねや評価、ブックマークや感想をいただけたお陰と深く感謝しております。

次回は『お知らせ』とともに特別篇を4回に渡ってお届けしたいと思っています。

特別篇の内容は、本連載の少し前、プロローグに至る経緯の内容です。

2回目の世界が終焉に至る経緯と、帝国や王国(エストール領)の動向など、詳しく綴っていく予定です。

特別篇終わりの始まり第一話は、『滅亡を告げる馬蹄』を投稿予定です。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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