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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 261

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クランティフ辺境伯旗下の兵士や、彼らと行動を共にした西部辺境域貴族軍の運命は過酷だった。

退路となる橋は一本しかなく、3,500名もの兵力が通過するには時間がかかる。

前面には河が流れており、武装した彼らが進めば、鎧の重みで溺死するのは確実だった。

鎧を脱いでしまうと、雨のように降り注ぐ矢の攻撃に、無防備に身体を晒すことになる。

「ははは、リュグナー殿のご采配は見事じゃな。

敵軍は逃げ場を無くして大混乱し、しかも集中しておる。撃てば当たるぞ! 攻撃の手を緩めるな」

「レッサー伯爵、あの橋はこちらが進撃する際も、ちょっと面倒なことになりかねませんぞ。

ここは用心して……」

「なーに、この機に乗じて左右の敵兵を殲滅し、中央は逃げる敵兵の背後に食らいつき、並行追撃いたしましょう。橋の向こう側に我らの橋頭保を築き、その後全軍で渡河するのはいかがでしょうか?

どうやら彼方には大物がいるようです。捕らえれば、我らの飾り物と交換することも叶いましょう」

伯爵に同行していた男爵のひとりが、圧倒的優位に進む戦況に、血気盛んとなってリュグナーの言葉に割って入った。

「……」

「そうじゃな。これなら魔法兵団の力を借りずとも、我らで十分な戦果を上げることができよう。

中央の射撃を緩め、並行追撃を開始せよ!」

リュグナーは沈黙していたが、彼らの心には既に、抑えの利かない炎が灯っていた。

敵陣に敵国の王女がいることは、俄かに信じ難い話ではあったが、これはフェアラート公国側にとって、最大のチャンスであると思えたからだ。

王女であれば、捕らえて人質交換の具にするもよし、カイル王国軍に降伏を迫ることもできる。

これによって得られる戦果は計り知れない。

彼らは一気に色めき立ち、狂喜しながら前線を押し上げ、突進していった。

対岸のカイル王国側の陣営でも、味方の惨状は十分に見てとれた。

このままでは、程なくして敵側に属していた味方の軍勢は壊滅し、公国側はほとんど損害なく勝利することは目に見えていた。

「殿下、色々と申し上げたいことはございますが、先ずは反撃のご下知をお願いします!

中央の弓箭兵は並行追撃してくる敵軍を狙い、橋の中央部に狙点を固定させて待機!

左右はそれぞれの対岸に狙いを定め、待機せよっ!」

「カイル王国軍、西部戦線防衛隊はこれより攻撃に移る!

全軍、戦闘準備を! 鐘の音に従い、戦闘を開始します。準備の鐘を鳴らして!

以後、攻撃の指揮をシュルツ軍団長に預けます」

シュルツ軍団長の言葉に、総司令官たるクラリスは透き通る声で、命令を出した。

戦場には攻撃準備を告げる鐘の音が響き渡った。

既にこの時、橋の対岸部分はフェアラート公国軍に占拠されつつあり、大多数のカイル王国兵は逃げ場を失いつつあった。

「クラリス殿下、恐れながら申し上げます。

沈下橋への対応は準備が整っております。対岸の味方への退路、如何いたしますか?」

進言のため進み出たエランを前に、クラリスは一瞬だけ迷った。

この河には、タクヒールの指示で渇水期に作られた強固な石造りの沈下橋が、水深の深い部分の何か所かに設けられており、そのルートを通れば、橋を通過せずとも渡河できるようになっていた。

追撃の際に、一気に味方を向こう岸へと送り出すためのものだったが、それは諸刃の剣ともなりえる。

敵側にその所在を知られれば、攻撃に利用される可能性もあったからだ。

「今は一人でも多くの王国兵を助けることが先決ね。

エランさん、沈下橋だけでなく氷魔法士も使いましょう。貴方に水魔法士32名、氷魔法士20名の指揮権を与えます。彼らの救出を頼みます。

シュルツ軍団長は橋の守りと攻撃をお願いするわね。お預けしている20名の風魔法士でいけるかしら?

ユーカさんは、救出部隊の護衛に風魔法士20名を率いて、風壁の展開をお願いできる?

残りの10名は、私たちが用意した退路を攻めて来る敵がいれば、その迎撃の準備を。

クリシアさん、聖魔法士10名を率いて、負傷者の対応をお願いしますわ」

クラリスの決断は直ちに実行に移された。

エランの指示で、川の中に進出した水魔法士たちによって、それぞれの沈下橋の両端には、一定間隔で旗が立てられ、河の水流が河の脇にある放水路へと導かれ、流れが穏やかになった。

更に、河の各所に設けられていた杭を目指し、土手の中に設けられた氷室から膨大な数の、とても分厚い氷の板が、予め丸太を並べた斜面を河まで一気に滑り落ち、河の中に浮橋を作っていった。

どれだけ優秀な氷魔法士でも、流れている河を瞬時に凍らせるなど、到底無理な話だ。

だが、既に固まっている氷塊を連結させ氷の浮橋とすること、それなら可能だった。

ただそれでも、準備を含め、その作業をには10名を超える氷魔法士が必要だったが……

そして、風魔法士たちが作った傘の下、対岸の兵士たちには退路が用意された。

「た、退路だぁ!」

「助かるぞ!」

「クラリス殿下、万歳っ!」

河岸に追い詰められ、進退窮まっていた彼らは、幾つかの退路に導かれ、撤退を開始した。

それと同時に中央の橋では、カイル王国兵を追った公国兵たちが殺到し、橋の中央部分に差し掛かろうとしていた。

「中央部の鐘、3打に変更せよ! 目標、橋中央部から対岸一帯の敵軍。

射撃用意……、撃てっ!」

シュルツ軍団長の指示で、橋の正面に展開していた王都騎士団第三軍のうち、1,000名の兵士たちが一気にクロスボウの矢を放った。

それらの矢は風魔法士たちに導かれ、弧を描いてフェアラート公国兵たちの頭上に降り注いだ。

射撃後すぐさま、最初の1,000名は右へと走り、傍らに控えていた別の1,000名が射撃位置に着いた。

「続けて第2射、連続発射を行う! 射撃要員の交代はできているな?

射撃用意……、撃てっ!」

第2射を放った者たちは、射撃後すぐさま、元居た左の場所へ走った。

そして後方に控えていた1,000名が、前方に進出して射撃準備を行う。

この河沿いの戦場は、弓箭兵たちが広く展開できる広大な平原ではない。展開場所も限られているため、事前にシュルツ軍団長は、3名一組の体制ではなく、3組交代で連続発射を行う体制を整えていた。

絶好の射撃位置である、約50メル四方の空間4箇所にに展開した1,000名が、次々と入れ替わり、間断なく統制射撃を繰り返す。

「第3射、用意……、撃てっ!」

この僅かな時間で行われた3連射で、戦局は一気にカイル王国側有利に傾いた。

無抵抗の獲物を狩るがごとく、戦いに狂奔していたフェアラート公国兵は、3連射を浴び立場が入れ替わるようにバタバタと斃れていった。

特に、橋の上に展開していた者たちは、後続に押され逃げ場もない。

「なっ、何をしておるか!

これでは今度は我らが、いい的になってしまうではないか。引けっ! 一旦後退して体制を立て直せ!

引けっ! 引けと言っているだろうが!」

敵国の王女が居ると知り、勇躍して前線に出て兵を指揮していた男爵は、動揺した声を上げていた。

後退しようにも、後続の兵が邪魔で身動きが取れなかった。

まして後退すべき退路が、最も危険な矢の暴風に晒されている場所なのだから、男爵の思うように兵士が動くことはなかった。

二度目の三連射が行われた時、男爵の命運は尽きた。

「お、俺はっ! あの生意気な成り上がりの小僧の首を取るために、ここまでやって来たのだ。

こ、こんな所で……、ぐわっ!」

これが男爵の最後の言葉となった。

時を遡ること二年、フェアリーの晩餐会にて馬鹿にしていたタクヒールの威に圧され、醜態を晒しただけでなく、自虐趣味、躾の悪い犬などと侮辱された彼は、自尊心を傷付けられた事に対し復讐を果たし、溜飲を下げることだけを目的に、今回の戦いに参加していた。

そして、彼の願いは永遠に叶えられることは無くなった。

「ちっ、してやられたか……

奴らの雑兵を討ち漏らしたことは悔やまれるが、男爵の仇は討ってやる!

飛び道具が、お前たちだけのものではないこと、思い知らせてやるわ!

一旦軍を引け! 魔法兵団を後方から前線へ、伝令を走らせよ!」

侵攻軍先遣隊を預かるレッサー伯爵は、舌打ちしながらも次の算段を巡らせていた。

降り注ぐ業火と、雷撃の雨を以て、敵軍を一気に掃討するため、復讐戦の準備に入っていた。

一方、カイル王国陣営では、撤退してきた兵を収容し、負傷者は後送されて直ちに治療が行われていた。

幸いにも敵側は、弓箭兵により徹底的に叩いたあと、退路のない河岸から王国兵たちを追い落とす戦術を取っていた。

そのため、橋の周りに展開していた味方を除き、左右の河川敷に展開していた西部辺境貴族たちの損害は、思ったよりも少なかった。

これは、フェアラート公国軍が余裕を持った距離から、逃げ場のない彼らを、じりじりと追い詰めるように弓箭兵による射撃を行っていたこと、それも要因のひとつだった。

「報告します!

まだ正確な数は分かりませんが、味方の損害は約1,500名、此方に辿り着いた兵2,000も半数以上が負傷しておりますが、聖魔法士により回復に向かっております。

即座に戦力となり得るのはおよそ1,000名前後かと思われます」

「ありがとう。

今はクリシアさんの所が一番大変だと思うので、各部隊はそこへの助力をお願いしますね。

これで、ひと段落かしら?」

「殿下! ひと段落ではありませんぞ!

敵も今度は、本気になって攻めてくることでしょう。先ほどは言葉を控えましたが、殿下はもう少しお慎みくださいますようお願いします!」

「あら、どうして?」

「どうしても、こうしてもございません!

殿下のお言葉で、敵軍は殿下がここにいらっしゃる事を知りました。

それがどういう意味か、お分かりいただけませんか!」

シュルツにしてみれば、頭の痛い話どころではない。

王国の大切な存在、王女の身に危険が及ぶことを避ける、これは万難を排してでも行うべきことだった。

「ふふふっ、必死になって攻めてくるでしょうね?

敢えて聞きます。シュルツ軍団長、ここに陣を構える私たちが、西部方面で最も恐れる事は何ですか?」

「それと何が関係を……

侵攻軍が数の利を生かして、一軍を前面に置きつつ、大きく戦場を迂回し王都を衝くことでしょう。

そうなれば我々は……、まっ、まさか?」

「そうよね、そうなれば私たちは一番困ります。

でも彼らは、思ってもいない美味しい餌が目の前に吊り下げられたのです。必死になってここを攻めてくることに固執するでしょうね。私たちの思惑通りに」

シュルツは目の前で微笑みながら、王族たる自身を餌と言ってのける少女を、末恐ろしく思った。

この胆力、男にさえ生まれていればこの国は、この先もずっと安泰となることだろう。

いや、中身だけなら十分に男と言って申し分ない。

「あら? もしかして今、失礼なことを考えていませんか?

魔境伯のように公然と私を、脳筋女、間違って女に生まれて来た者、そのように仰りたいのでしょうか?」

そう言って笑う姿は、見た目だけは可憐でまだあどけない少女だ。そう、見た目だけは……

それにしても、魔境伯はそんな不敬で恐ろしいことを、事も無げに殿下に言うのか?

それはそれで怖いもの知らずの、恐ろしい男だと思う。

以前に外務卿が『殿下を御すことができるのは魔境伯しかおらんて』、そう言っていたのを思い出した。

これがこの国の新しい時代なのか?

今回の防衛策自体、魔境伯やその配下の案と聞いている。

次世代を担う若手の軍団長、そう持て囃されていた自分自身が、もう既に時代に取り残された古いもの、そう感じずにはいられなかった。

「それに、私が身分を明かしたことで、少なくとも2,000名の兵士たちを助けることができました。

亡くなったクランティフ辺境伯の真意は分かり兼ねます。でも、彼の言葉に対するには、それ相応の立場が必要であったと考えています。

私は、誤解したまま王国の兵同士が、相打つ姿など見たくありませんでした」

そう言った彼女は、先程とはうって変わった憐憫と慈愛に満ちた表情をしていた。

「御意」

この方はそこまでお考えで……、自身とは器が違う。

戦慄に似た感覚に襲われたシュルツは、ただ一言だけ発するのが精いっぱいだった。

「さて、予定外の前座はこれでおしまい。

これからが本当の戦いよ。シュルツ軍団長、そして皆さま、引き続きお願いしますね」

西部戦線は新たな局面へと移ることになる。

クラリスの言葉通り、カイル王国軍が経験したことのない戦い、魔法士同士が相打つ戦いが始まろうとしていた。

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『魔法士相打つ戦い』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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