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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 270

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サザンゲート要塞は、グリフォニア帝国の猛攻を受け、その陥落は時間の問題となっていた。

そこに、諸将を驚愕させ、混乱する事態が発生した。

そのひとつは、首将たるハストブルグ辺境伯の戦死の報だったが、もうひとつの知らせが大きな混乱を招いていた。

「カイル王国軍全軍に告げる。ハストブルグ辺境伯は戦死された!

辺境伯より託された最後の言葉により、全軍に即時停戦と降伏を命ずる!」

辺境伯より後事を託されたという、キリアス子爵から、諸将が信じがたい内容の命令が下されたからだ。

「そんな筈はない! 辺境伯はサザンゲート砦への撤退を指示されていた」

「この期に及んで敵軍に降伏だと? その前の命令と全く異なるではないかっ!」

「辺境伯が戦死されただと? 負傷はされていたが、先ほどまでお元気であった筈だ!」

諸将からは反発の声が上がった。

事実、辺境伯は亡くなる直前まで伝令を出し続け、その命は諸将に届いていたので、キリアス子爵の言葉を誰もが不審に思った。

「話にならんわ! 我らは辺境伯直々の命に従い、これより敵陣を強行突破のうえ撤退する!

各々方、付いて来られよ」

「そもそも、左翼の城壁を破られた我らの責もあるが、右翼では城門を開き敵軍を招き入れたとの報告もある! そのような疑念がある以上、命には従えん!」

「敵軍が何故、右翼を攻撃せなんだか、合点がいったわ! キリアス卿の命など聞ける訳がなかろう」

クライツ男爵、ボールド男爵、ヘラルド男爵は、キリアス子爵からの使者を面罵すると、速やかに軍をまとめ敵軍の中を強行突破すると、サザンゲート砦へと撤退していった。

激戦の中、半数近くまでに軍を減らして。

「辺境伯が亡くなられた今、我らもお供するまで! 味方の退路を確保するため、全軍、突撃せよ!」

辺境伯の最後の命に従い、進んで殿軍に加わり、死兵となって戦い壮絶な戦死を遂げる者も後を絶たなかった。彼らの命を賭した奮戦があったからこそ、多くの兵たちが撤退することができていた。

そのため、キリアス子爵が守っていた要塞右翼以外は、要塞陥落後も激戦となり、帝国軍は容易に進駐できなかった。

その状況を、要塞右翼を守るキリアス子爵の方面から、要塞内に入場した第一皇子は苦々しく見つめていた。

「キリアス卿よ、事前の申し合わせ通り其方の降伏は認めたが、この醜態、如何するのだ?

要塞攻略にあたって、そなたの内通に功があったことは認める。だが、敗残兵を御しえないこの様では、事前に其方が申し入れていた、占領後の地位の保証もままならんが?」

「先ずは失態をお詫びします。

これより殿下の温情と御意に従わぬ愚か者共を排除いたします。それでよろしいでしょうか?」

「うむ、立場を変えるとは難しいものでな。昨日までの友を敵とせねばならん。

それができぬようでは、我らも信頼できんということだ。其方も理解が早く、重畳ということだな」

戦いの蚊帳の外に置かれ、ほぼ無傷だったキリアス子爵軍は、撤退するため交戦していたカイル王国軍に向けて、一斉に襲い掛かった。

ハストブルグ辺境伯の命令に従わぬ罪を鳴らし、軍令違反を咎めるという、大義名分を掲げて。

このような結果、要塞内に残る抵抗勢力は全て排除されたが、同時に、カイル王国軍のなかで、キリアス子爵の裏切りは疑念から確証へと変わっていった。

このような経緯で、サザンゲート要塞は陥落した。

攻防が決したのち、キリアス子爵はひとり、ハストブルグ辺境伯が本営に定めていた指揮所にいた。

この辺りは、キリアスが辺境伯を討って後、放置されたままだった。

幾人かの亡骸が横たわる中、彼はめぼしい人物の亡骸の前に進むと跨いた。

「もう我が身は完全に堕ちる所まで堕ちた。今更弁解のしようもないわ。

これは全て、辺境伯、貴方のせいですよ」

辺境伯の亡骸に向かって語り掛けていた彼の双眸には、涙が溢れていた。

「貴方は最後に、何故、とおっしゃいましたな?

それは私も同様です。

何故、私は貴方の後継者になれなかったのですか?

何故、成り上がりのあの小僧なのですか?

何故、私が武勲を上げる道を閉ざされたのですか?」

そう、キリアスには延々と積み重なった、やるせない思いがあった。

「私は、かつて汚辱にまみれ没落した、キリアス伯爵家を再興すること、ただそれだけを夢見て生きて来たというのに……。

貴方の為されようはあんまりです。

この戦い、左翼の私には何の武勲を立てる機会すら、与えていただくことがなかった。

更に、我が領地は敵軍に蹂躙され、私は捨て石としてこの要塞を守るだけ。それでは失うものの対価に、何も得るものはないではありませんか?」

キリアスはかつて、王都騎士団長を務めるキリアス伯爵家の跡継ぎとして、将来を嘱望された立場で幼少期を過ごしていた。

その運命が急変したのは、20数年前にグリフォニア帝国軍から初侵攻を受けた際、父の失策によりカイル王国軍が惨敗してからだ。

キリアスの父は王都騎士団長の職を追われ、家は伯爵から子爵へと降爵処分された。

この敗戦は、キリアス伯爵に責が無かった訳ではないが、中央の権力にしがみついた老人や前国王が、敵軍や戦を甘く見た結果、王都騎士団の投入を渋った事が最大の原因だったと言われている。

なのに、自身の父だけがその責を負わされ、貴族社会からは無能者の烙印を押され、キリアス家は汚名を永劫に背負うことになった。

それ以降、キリアス家の栄誉を取り戻すこと、これが彼の生きる目的となった。

その階梯は生易しいものではなかったが、ある程度までは順調に進んでいった。

ソリス家から2人の兄弟が世に出てくるまでは……

ハストブルグ辺境伯の娘婿に見初められ、それに見合う評判と武勲も積み重ねた。

彼はいつか、辺境伯の後継としてその地位に就くことが有力視され、自身もそれを既定路線と夢見ていた。

そしてその夢は、実現する一歩手前まで来ていた。

だがそれは、残酷な形で崩れ去った。

それでも、武勲を積み重ね、昇爵して栄誉を取り戻そうと努力した。

だが、その栄誉は常に、他者へと流れていった。

何をしてもあの兄弟には敵うことはなかった。

キリアスは彼らの行う施策について、積極的に情報を集め、長所と思える事は進んで自領にも取り入れていった。

だが、結果として彼らとの差は開くばかりだった。

自分自身が取り残される焦り、日々それに苛まれていたといっていい。

「今回の戦ですら、例え勝っても栄達できることもなく、またもや小僧たちの後塵を拝むだけです。

貴方には、そんな私の惨めな思いを、理解できなかったでしょうね」

キリアスの心には、いつの間にか闇が芽生えていた。

当人の意識しない所でそれは成長し、闇はより深くなっていった。

今は亡き、ヒヨリミ子爵はそんな彼の闇を見出した。

生真面目で、真っ直ぐな心を持っていた彼は、闇の住人の宿り木として、その価値を見出されることになった。

本来なら、実力に見合った相応しい処遇も、彼らの言葉により、嫉妬や恨みへと変えられていった。

心の中に生まれた小さな猜疑の芽は、彼らによって育まれ、その後も、ヒヨリミ子爵や長男のリュグナーによって、彼の心に潜む闇は増幅されていった。

そしてこの戦いの数ヶ月前、怪しげな老人の訪問を受けたとき、遂に彼は完全に闇側へと堕ちた。

嫉妬と猜疑、逆恨みの渦巻く、深い闇の中へ……

彼が辺境伯に投げかけた疑問、それは冷静な普段の彼ならば、自分自身で明確な理由を見いだせるものばかりだった。

辺境伯が後継者にキリアスを選ばなかった理由、それらは幾つかあった。

キリアスは大きな目標を達成するため、自らを厳しく律していた。

それは同様に、同僚や配下にも同じことを求め、何かにつけて非常に細かく、かつ厳しい男だった。

優秀だが、生真面目さから些細なことも気になる性格は、部下たちを委縮させる傾向にあった。

言葉少なく口下手で、部下を思う彼の心は伝わらず、彼の真面目さを息苦しい、そう評価する者すらいた。

そのため、諸将や多くの者たちを率いる人望、これがキリアスには決定的に欠けていたのだ。

生真面目さと堅苦しさと厳しさ、それだけでは人は付いてこない。

終始隙が無く振る舞う彼に対し、周囲は息苦しさを感じるだけだった。

事実、タクヒールですら無意識に、彼とは一定以上の距離を保っていた。

片や気さくなダレクは、時には豪放であり人情味も多く、抜けた部分も隠さず、多くの者が親近感を抱く存在だった。

また、ダレクは彼より身分の低い者たちから特に人気があった。そして、ここ数年の栄達によって、彼より身分が高い者たちの数は、格段に少なくなっていた。

実際、直接の配下を除けば、より栄達した弟のタクヒールより、ダレクを信奉する者の方が多い。

それは弟のタクヒールですら、自ら認め、公言して憚らない事実であった。

だからこそ辺境伯は、多くの諸将を率いる立場の後継者に、人望と将才のあるダレクを選んだ。

そもそも、タクヒールやダレクが武勲に恵まれ栄達したのは、それなりに窮地を潜り抜けた結果であり、キリアス自身は彼らほど命の危険に身を晒していない。

多くの苦難に打ち勝ち栄達したからこそ、彼らは大きな力を手に入れた。その結果として、その力を振るう機会を与えられただけであって、2人の兄弟はその期待と責任の重圧を、常に背負って戦っている。

当のキリアスには、その責を全うする力も兵力も、そして器量もなかった。

彼は戦場の一方面を指揮する、指揮官としては非常に優秀だが、戦局全体を俯瞰して指揮する力、将として諸将を率いること、戦術ではなく戦略的に考え、全軍を指揮することに関しては、到底2人には及ばなかった。

冷静なキリアスなら、それらの事実を至極当然の事として、受け止めることができたはずだった。

だが、彼の心は徐々に歪められ、猜疑心と嫉妬のみが拡大された結果、キリアスの心にあった小さな闇が、彼を支配するまでになっていた。

「辺境伯、見ていて下され。

私が、キリアス家の名誉を取り戻し、この国に新しい道を切り拓く者となるか、これまでの汚名に、裏切り者という新たな名を加え、歴史に消される者となるか……

この先私が、進んでいく姿を……」

そう告げるとキリアスは、瓦礫の散乱した指揮所を後にした。

その目は既に濁り、能面のように表情はなく、ただ虚ろであった。

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『悲報』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

<補足>

今回の宿り木の件ですが、142話で登場した老人の言う『新しき芽』や、200話でリュグナーの言った『宿り木』が全てここに繋がっております。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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