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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 283

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帝国軍左翼陣営と魔境伯陣営の戦いは、既に開戦より4日目を迎え、その日の激戦を予兆するかのように、一際大地を紅く染めた朝日が昇った。

タクヒールらが守備するアイギス方面はこの日、不気味なくらい平穏な1日となった。

緒戦では、ずっと守勢に回っていたタクヒールたちだったが、2日目より攻勢に転じ、3日目も継続して、カタパルトを使用した嫌がらせの攻撃に終始していた。

これには攻める側の第一皇子も、その対処に辟易とした結果、とうとう4日目は、王国軍の射程距離を越えて動くことはなかった。

第一皇子自身は神経を逆なでされつつも、4日目は自発的に動くことなく耐えていた。

主攻であるイシュタル方面の戦果を、心待ちにしながら。

彼の元には、別働隊の主将であるハーリーから、本日を期して総攻撃を行う旨の連絡が来ており、そちらの戦果が気になって、攻撃どころではなかった点も否めない。

一方、タクヒールも、敵軍が鳴りを潜めたのに合わせ、攻勢を控えていた。

彼はこの間隙を利用して、城壁上や有人気球による上空偵察で、第一皇子の動向をつぶさに観察し、決めのの一手を遂行するため準備を、着々と進めていた。

また、ゴーマン伯爵の守る関門も、内側から攻め寄せる帝国兵が引いたとき、外側から攻めるキリアス子爵も、関門から軍を引いていたため、大きな動きはなかった。

キリアス自身、片側だけから関門を攻め寄せる愚を、十分に理解していたため、反対側から聞こえていた喚声が静まると、さっさと軍を引いていた。

その中で唯一、活発な動きを見せていたのは、今日を決戦日、運命の日と定め、満を持して体制を整えていた、ハーリー公爵率いる別働隊と、それを待ち受けるアレクシスが主将を務めるイシュタル防衛軍だった。

「報告! 帝国軍の大軍が、こちらに向けて進軍して来ております。そ、その数、歩兵約8,000から10,000! 鉄騎兵約3,000騎! た、大軍です!」

物見の者が血相を変えて、イシュタルの防衛軍の陣幕に飛び込んで来た時も、アレクシスは冷静だった。

「とうとう来ましたか。全軍を以て此処を落とすべく、総攻撃を掛けてきた、そういうことでしょうね。

この数、兵力差ならきっと、包囲戦を仕掛けてくるでしょう」

「司令官は、これをどう受けられますかな?」

敵軍の数を聞き、多くの諸将が青ざめるなか、平然とそれを聞き流していたコーネル子爵が問うた。

「敵の主攻は恐らく、前回の攻防でも主戦場となった東門でしょうね。今度は伏兵の潜む防壁を潰しつつ、逆にそれを伝って攻撃してくるでしょう」

アレクシスは事もなげにそう言うと、彼以外に唯一、平然としていた3人に話し掛けた。

「ソリス伯爵、700名を率いて東門の守備をお願いします。ここが最も激戦となるでしょう。

犠牲を抑えて、時間を稼ぐこと、それを第一にご采配をお願いしたいです」

「承知した。要は負けない算段で、と言う事だな?」

アレクシスは微笑みながら頷くと、言葉を続けた。

「コーネル子爵は、400名を率いて南門をお願いします。状況に応じ、東と連携を取ってくことについて、独自のご判断で、必要な際には動いてください」

「確かに承った。義兄上、よろしくお願いします」

アレクシスにとって、この東と南の連携は心配していなかった。むしろ期待以上の動きをしてくれるはずと、心の中で確信していた。

「アラルさんは、300名を率いて北門をお願いします」

そこまで話すと、アレクシスは一息ついた。

周囲を見回し、諸将の反応を確認する。

ここまで彼を軽んじ、反発してきた者たちも、素直に彼の言葉を受け止めているようだった。

「私は、ロングボウ兵とともに、西を守りつつ遊撃として各所に支援を行います。

味方の損耗は極力抑えてくださいね。これは絶対ですので、どうかよろしくお願いいたします。

では、気球を上げてください。赤-赤-Z旗で」

「応っ!」

「ブラントさん、ロングボウ兵を200名ほどを、西の守り専任としてお預けします。水道橋の守りが最優先ですが、最も高い位置である西の防壁上から、届く範囲で構わないので敵兵を牽制してくださいね」

「承知しました。水道橋を死守いたします」

タクヒールの配下、直属の魔法士は数が限られている。

これを西部戦線、アイギス、イシュタルに分散させているのだから、猶更だ。

幸い、長年の努力の甲斐あって、またその力を大きく飛躍させたこともあり、ソリス伯爵、ゴーマン伯爵、コーネル子爵も自前の風魔法士を、それぞれ数人ずつ確保することが間に合っていた。

そして魔境伯自身、王国全土からかき集めた魔法士と、戦いの一年前に実施した適性確認で、もともと抱えていた数の倍近くまで、その戦力を増強することには成功していた。

タクヒールらはそれを、必死にひた隠し、その実情は王国中枢ですら全く把握できていないほどになっていた。

「あとは、初陣となった彼らが、どこまで活躍できるかだね。

まぁ、元々魔境伯の配下だった彼ら以外、王国の各戦線で戦う魔法士は、ほぼ全てが初陣なんだけど」

そう無意識に呟いたアレクシスは、改めて魔境伯とその配下が、この国でいかに突出した存在であったかを、改めて思いなおした。

これまでの彼の行動、ここ10年に渡る動きの全てが、まるでこの時に照準を合わせて動いてきたかのように思えた。

「さて、少しでも期待に応えられるよう、僕も頑張りますか。

クリシアに笑われないように……」

こうして、帝国軍左翼部隊との最大の激戦、イシュタル防衛戦は開始された。

予め、各門の防衛部隊は、守り切れなくなれば、無理をせず、内側の区画に撤退するよう告げてある。

なぜなら、広大な城壁の防衛ラインを守備するには、余りに手持ちの兵力が少なすぎるからだ。

総司令官は、当初予定した戦力より、遥かに多くの兵を配備してくれたが、それでもまだ足りない。

アレクシスたちの目的は、少しでも長く持ちこたえ、アイギス方面での戦いの勝利を待つこと。

これが基本方針であった。

満を持して攻め寄せた帝国軍指揮官、ハーリー公爵の指示のもと、帝国軍の主力3,000名を東門に、その他の門には各2,000名の歩兵を配し、四方から攻撃を開始していた。

「右側に伸びる防壁、取りつかれました!」

「左側防壁、対処間に合いません! 防壁上から敵軍が進んでまいります」

「門の正面、敵が盾と竹を並べて進んできます、弓では対処できません!」

刻一刻と目まぐるしく変化する戦況と、その対応にソリス伯爵は追われていた。

「左右の防壁は、敵に取らせてやれ! むしろ、両側の防壁上が敵兵で満たされた方が好都合だ。

こちらの外壁に取りつかれないこと、それだけをを考えろ!

正面! 今、援軍を呼んでいるから、暫らくは持ちこたえて、奴らを取り付かせるな!」

ソリス伯爵は、指揮所から大きな声を上げ、全軍を叱咤していた。

「ちっ、忙しいことだな。息つく暇もないわ。同時に数か所の対応と指示を出さねばならんとはな……」

数多の戦場を往来し、戦に慣れたソリス伯爵ですら、思わず愚痴をこぼすほどの忙しなさであった。

そこに一群の騎馬隊が現れた。

「伯爵、お待たせしました。取り急ぎ正面を薙ぎ払ったあと、我らは南の支援に移動しますので、引き続き宜しくお願いします」

アレクシスは、西門以外の各所に、ロングボウ兵200名ずつを個別戦力として配置し、自らは100名のロングボウ兵と共に、遊撃として防衛陣の各所を騎馬で移動していた。

「各位、敵の最も固い部分に、槍の雨を降らすぞ! 鐘を鳴らせ!」

自らが風魔法士であるアレクシスは、クリストフやアウラほどの射程、威力はないものの、通常より射程の長い程度、だが威力は格段に強化された『槍』と呼ばれた、攻撃を使えた。

「三打始めっ!」

号令ののち、三打目で300本の、格段に強化されたロングボウ兵の弓が、まるで槍が突き刺さるかのように帝国軍を襲った。

彼らの矢は、竹を組み合わせて作られた楯や、帝国軍歩兵が標準装備していた大楯をも貫き、粉砕してそれを掲げる兵士たちに突き刺さる。

「続けて第二射準備、伯爵、第二射に合わせて、連絡橋を焼き払ってください」

ロングボウ兵の装填は、クロスボウ兵に比べて明らかに早い。

続け様に放たれた第二射に合わせ、ソリス伯爵が放った火が、前日から十分に油を染み込ませていた橋や、油を流し込み、足元に可燃物を敷き詰められた防壁上に引火する。

その火は一瞬で燃え広がり、まるで東門から見ると、二本の炎の道ができているかのようだった。

連絡橋の上や、防壁上は炎に包まれ、そこから攻勢をかけていた帝国兵もろとも、焼け落ちた。

「くっ! 悪辣なことを……

東門を攻めている軍勢を一旦引かせろ。防壁上だけではない、至る所に罠があるやも知れん」

ハーリー公爵の撤退命令により、帝国兵は安全圏まで軍を引き、体制を立て直した。

「ふん、こうやって手の内を晒し続けるが良いわ。果たしてそれが、いつまで続くか、それが見物だわ」

そう言うと、未だに衰えない士気を保ち、柔軟に攻勢を掛ける場所を変化させていった。

それに対しアレクシスは、各門を駆け回り、その支援に追われていった。

このような激戦を経て、夕暮れとなった際もイシュタルは未だ健在であり、周囲が暗闇に包まれると同時に、帝国軍は一旦軍を引いた。

この日の戦いが終わり、兵たちの配置はそのままの状態で待機しつつ、ソリス伯爵、コーネル子爵、アラルなど、各門を守る主将は、アレクシスに召集され、中央区画に集結していた。

「本日の皆さまの奮戦、お見事でした。流石、勇名を馳せた歴戦の勇者と感服した次第です。

本当にありがとうございます」

そう言ってアレクシスは深く頭を下げた。

「なんの、司令官が要所要所で援軍を率い、戦局を逆転させてくれたお陰だ。

だが……」

「はい、ソリス伯爵のご懸念通り、我々は今日の戦いで、多くの罠を使い切りました。

明日は更に厳しい戦いになると思います」

「そうですね、少ないとはいえ、我らの守備兵にも犠牲が出ています。

負傷者も内部区画に移しており、戦力減は否めません」

アレクシスの言葉に応じた、コーネル子爵の言葉の意味することも大きい。

そう、今日の戦いでは、敵軍総数1万3千のうち、少なくとも1割を討ち取るか戦闘不能にしている。

だが、開戦当初は2千5百ほどいた味方も、初戦で百を失い、今日の戦いでも2百の死傷者を出していた。

大きな戦果を挙げたとはいえ、数の比率でいえば、この先ジリ貧になるのは目に見えていた。

「しかもこの長大な城壁は、夜ともなれば我らを利するとは限らんしな」

「ソリス伯爵のご指摘は、僕の懸念でもあります。

暗闇に乗じ目の行き届かない、防御の薄い部分を攻められれば、ひとたまりもありません。

そして今夜、敵は必ず襲ってきます」

「確かに今日の攻撃は、強襲を行ってこの城壁を破るというより、我らの守りに穴がないか、弱点がないか探っていたような節もある。だからこそ我らは持ちこたえられた」

「コーネル子爵、僕も同じように考えていました。

そして、守り切れないなら、捨てればいいことです。今夜、密かに外部区画を放棄します」

「なぁっ! なんと!」

「よ、よろしいのですか?」

「お二人には、この街の秘密をお伝えします。

外部区画は、本来敵を釣るための餌に過ぎません。中央区画の内壁は、外壁より高く厚く、強固に作られており、堀も同様です。内側の方が守りは固いのです。

そして苦労して獲った餌に敵が固執している時、逃げ場のない外部区画は、カタパルトの草刈り場と化し、敵軍は一掃されます」

ここに集う4名のうち、初めてこの話を聞かされた2人は、驚きのあまり言葉も出ない。

『こんなエゲツナイ作戦、俺には思いもよらなかったよ』

メアリーとサシャから、この街の秘密を初めて聞かされた時、タクヒールも驚き、そんな言葉を吐いたという。

イシュタルは外見の優美さとはかけ離れた、鋭い爪をその内側に隠し持っている街だった。

「さて、優秀な時空魔法士でもあるソリス伯爵にお願いがあります。

暗闇に乗じて、外壁に備え付けられたカタパルトを全て回収し、中央区画の所定の位置に再配備していただけませんか? 敵に利用されるのも、それを防ぐため焼き払うのも勿体ない話ですし」

「あ、ああ、承知した」

「コーネル子爵には、外壁上に篝火をお願いします。目いっぱい派手に。そしてこの案山子を各所に立ててください。敵に我々が警戒を厳にしていると思わせるために。

その設置が完了したら、全ての兵を中央区画に引かせて、再配置をお願いします」

「司令官は?」

「外壁が落ちるまでの間、ロングボウ兵たちと外部区画から、ちょっと偽装工作を行います。

無人とはいえ、外部区画の城壁を簡単に落とさせませんからね」

そう言ってアレクシスは大胆不敵に笑った。

ソリス伯爵とコーネル子爵は、改めて、魔境伯が率いる軍、そしてその都市の恐ろしさを思い知った。

その夜、夜も更けた頃になって、帝国軍は全軍を挙げての夜襲を敢行した。

だが、各所で外壁に立てこもった弓箭兵による反撃をしたたかに受け、損害を重ねていった。

そして苦心の末、遂に城壁を超え、東門と南門、北門を落とし、外部区画へと侵入し凱歌を挙げた。

イシュタルの城門は、帝国軍が放った火により燃え落ち、夜空を赤く染めた。

遠目から見るとそれは、イシュタルの街自体が炎上しているかの如く……

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『イシュタル攻防戦(舞い降りた光)』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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