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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 287

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グリフォニア帝国第一皇子、グロリアス率いる一軍は、イシュタルの城壁に取り付くと、東に向けて疾走していた。城壁直下では、あの恐ろしい殲滅攻撃も、槍と見紛うばかりの激しい矢も飛んでこない。

時折後続に、何やら色のついた煙幕のような物が、城壁の上から投げ込まれてはいたが、彼らに後ろの様子を気遣う余裕は全くなかった。

「殿下をお守りするのだ!」

第一皇子は逃走する帝国軍の戦闘部隊を率いて進み、護衛の騎兵たちは、その左右を取り囲みながら疾走していた。

更にその外側は、歩兵たちが盾を掲げながら並走している。

「東の先、城砦の切れ目から竹林の中に入り、そのまま東に抜けるぞ!

あの先には、3,000の鉄騎兵が控えておる!

そこまで、そこまで逃げ切れば我らの勝利だ!」

撤退の途中、第一皇子は味方を鼓舞し続けた。

これまでの過程で、討ち減らされたとはいえ、第一皇子指揮下の軍勢は6,000名以上、この先に展開する鉄騎兵を合わせれば、総勢9,000名にもなるのだから。

ハーリー公爵に預けた別働隊と合流すれば、再起を図ることもできる。

だが、現実は彼の想像より過酷だった。

彼はまだ、別働隊の敗戦も、竹林に潜む鉄騎兵の惨状も知らない。

「良いか! 先頭集団に諸悪の根源は居る!

後続は味方が足止めしてくれる。我らはただ敵を叩き潰すのみ!

魔境騎士団、我に続けっ!」

ヴァイス団長の指揮の元、2,000騎もの戦力が、突如として撤退する帝国軍の横合いから襲い掛かった。

彼らはただ、第一皇子だけを目掛けて、凄まじい突進を行った。

「ひっ、ひぃっ!」

「ぐわっ!」

「べっ!」

団長らの進路上にあった帝国軍の先頭集団、その中央を走る歩兵たちは、次々と足をもつれさせて転倒し、後続を巻き込んでいった。

まるで突然、体に大きな重しを乗せかけられたかのように……

足をもたつかせ、混乱する帝国兵らの陣列を切り裂きながら、魔境騎士団の軍馬は、帝国軍の陣列の最も厚い部分へと、斬り進んで行った。

それはまるで、鋭利な刃物で柔らかい肉を切り裂くかの如く。

「狼狽えるなっ! 盾を並べて左右に陣を展開して、騎馬の突進を受け流せ!

そうすれば、奴らも簡単に反転できんわ!」

第一皇子の戦術は、基本的には誤りではなかった。

ほぼ縦陣に近い紡錘陣形で、中央を突破しようとするカイル王国軍は、帝国軍が左右に分かれ、その突進を後方に受け流せば、後続の味方に押され、前に進むしかなくなる。

そうなれば、左右を歩兵が作り出した人の壁に阻まれたまま、馬首を巡らせて帝国軍を追撃できない。

だが、ひとつだけ、第一皇子が予想すらできないことがあった。

「ヨルティアさん、今です!」

ヴァイスの合図とともに、東に向かって疾走していた帝国軍の中軍が、一斉に崩れた。

突如人馬が将棋倒しに倒れ始め、後続を巻き込み始めたからだ。

そのため、東に疾走を続ける帝国軍の軍列に、大きな空白地帯が生まれてしまった。

「勝機っ! この機に反転し敵の前衛を押し包め!」

それはタクヒールが先頭部隊だけを切り取り、確保するために考案したUターン攻撃、そう名付けた戦術だった。

団長の指揮のもと、魔境騎士団はその空白地帯を利用して左右に展開、馬首を巡らせて逆進し、帝国軍を外側から包囲するように彼らに並走し、追走を始めた。

「なっ! 後続はどうした? 何故我らに続いて来ない!」

第一皇子は予想外の事態に、狼狽して声を上げた。

その時、反転した部隊が再び襲って来た。

「いけません、来ます!」

側近の狼狽した声と同時に、第一皇子の護衛たちにも、団長指揮下の騎馬隊が襲い掛かった。

「諸悪の根源! 大人しく縛に付きなさい!」

第一皇子は、戦場の中でひと際よく通る、甲高い声が響いたのを聞いた瞬間、突然つんのめるように転倒した愛馬から、宙を舞い……、そして大地に叩きつけられて意識を失った。

次に第一皇子が目を覚ましたとき、彼はそれなりに調度品が整えられた一室の、寝台に横たわっていた。

身体の傷には手当の跡があり、多少の痛みは感じるものの、問題なく起き上がれそうだった。

だが、彼は起き上がることができなかった。

両手と両足が、寝台に縛り付けられていたために……

「何だこれは? 余を誰と思っている! 無礼であろう!」

あらん限りの声でそう叫んだためか、彼が押し込められた部屋を訪れた者がいた。

「グリフォニア帝国第一皇子、グロリアス殿下でいらっしゃいますな?」

そう尋ねて来たのは20歳前後の、それなりに整った軍装はしているものの、凡庸そうに見えた男だった。

しかも、第一皇子と尋ねておいて、跪くこともしないでいる。

「それが分かっていて、この無礼は何だ!」

「殿下に現状をご理解いただくためです。

ご理解いただければ、皇族に相応しい礼節を以て対応しますよ。まぁ戦場ではかくたるおもてなしもできませんが……

申し遅れました、私はソリス・フォン・タクヒール、カイル王国で魔境伯を任じられている者です」

その言葉を聞き、再びグロリアスは卒倒し、意識を失った。

「やれやれ、これだから高貴なお方は……、まぁ、無理もないだろうけど。

まぁこの先は、縄目を解いて監視下に置き、軟禁していくしかないだろうな」

そう呟いて俺は、彼の眠る部屋を後にし、再び、団長たちが待ち構えている、指揮所に戻っていった。

戦いには勝ったとはいえ、まだまだすべきことが山積している。

アイギスの砦に設けられている指揮所では、団長の指示のもとに情報が行き交い、未だに戦時と変わらぬ、張り詰めた空気が漂っていた。

「団長、各所で魔物が帝国兵を襲っております。その規模は、徐々に大きくなりつつあります」

「ラファール、奴らも相当怒っているだろうな。帝国軍はこれまで、魔境を焼き払い多くの魔物を殺した。

これまでは何とか対処できていただろうが、今はな……

城壁側に逃げて来た者たちは、縄梯子を下して助けてやれ。可哀そうだが、トンネルは使えん」

「馬と違って、人にはしゃべる口がありますからね。こちらも秘匿事項を晒す訳にもいきませんし、自力で逃げてもらうしかないですね」

2人の会話に、俺は思うところがあって、割って入った。

「団長、ラファール、トンネルはダメだけど、東の避難場所は構わないよ。投降した者を一旦魔物から避難させてやってくれないか?」

東の避難場所とは、アイギスとイシュタル側の関門、その間に設けられた、一時避難施設だ。

アイギスの防壁延伸工事、イシュタル側の関門工事が完成する前は、万が一工事中に魔物から襲われた際、一時的に逃げる場所として、簡易の防壁を設けた一角を作っていた。

「了解しました。屯田兵たちはもと帝国人です。彼らに誘導してもらいましょう」

「それで頼む。で、状況は?」

「はい、まだ数は暫定ですが、帝国軍のうちアイギスを攻めていた歩兵を中心とした部隊は、主将が捕縛されたと同時に潰走しました。概数ですが4,000名ほどがサザンゲート方面に向かい、逃走したと思われます。

東の竹林に潜んでいた鉄騎兵ですが、制圧弾の攻撃で半数以上が乗馬を失い壊滅したようです。

それでも1,000名以上が、その大半は徒歩で脱出したようですが、身動きできない者が1,000名近く取り残されています」

聞いたところによると、制圧弾を受け、多くの馬が狂奔したことで、落馬したり馬蹄に踏みつぶされたり、鉄騎兵たちは散々な目にあっていたらしい。

そして、悶絶し転げまわっていたり、くしゃみが止まらなくなった所を石弾攻撃が襲い、想像以上のダメージを受けてしまったようだ。

「それでも多いな……、一応魔境騎士団の半数を、屯田兵と共に作業に当たらせよう」

「承知しました。それとラファールからも報告があります」

「ラファール、どうした?」

「我々は勢子として、帝国軍を追い立てたあと、奴らの退路、最もここから近い宿営地を潰して来ました。

まぁそのついでに、奴らが残していた大量の軍馬を発見しまして……、3,000頭より少し多い数の騎馬を、頂戴して来ました」

そう言って彼は、ニンマリ笑った。

「ええっ? どうやってそんなに?」

「いや、我らも人手が足らないため、手分けして1,000頭だけ引っ張ってくる予定だったんですが……

宿営地を潰す際、むざむざ残った馬を魔物の餌にするのも忍びなく思いましてね、綱を切って放してやったんですよ。そしたら、そのうち2,000頭以上が大人しく我らに付いて来てくれまして……」

「ははは、きっと馬たちも、ラファールに恩を感じたんだろうね。でも、3,000頭は凄いな。

因みに団長、捕虜はどうなっているでしょうか?」

「そうですね。我らは第一皇子の身柄確保を優先しましたので、基本的に捕虜は取らず撤退しました。

それ以外に城壁にて助けを求めた者、約1,000名程度を捕縛しています。この先、もう少し増えそうですが」

「負傷者は? 取り残された者はいないか?」

「これについては、掃討戦で戦場を巡回した私から報告させていただきます。

死者は遺棄されているようですが、負傷者は、その殆どが逃亡した兵たちに伴われているようです」

「ゲイル、ありがとう。

そうか……、またサザンゲートまで、魔物の道ができることになるか? これは……、やむを得ないか」

「今回は帝国軍も、それなりの数が健在で動いています。そして、最寄りの宿営地こそラファール殿が潰してくれましたが、彼らにはまだ、魔境を抜ける道と、その先に2つ宿営地が残されています。

恐らく、撃退できると思われます。先ほどまで戦った相手ではありますが、できればそう願いたいです」

俺を始め、皆も同じ気持ちだった。

例え敵兵でも、戦いでの死と、魔物の餌食になるのでは、大きく違う。

彼らの多くは、自ら望んでこの戦場、魔境に入ってきた訳ではないのだから。

「団長、魔境騎士団と屯田兵の出発を急ぎお願いします。指揮はゲイルに任せる。

ラファール、シャノンの力を借りて、俺の代わりに敗残兵に対し、投降を呼び掛けてくれないか?」

「承知っ!」

「はっ!」

二人が出て行った後に、今度はイシュタルからの使者が到着した。

既に気球通信で、此方の勝利を伝えているから、それを受けて使者を送ってきたのだろう。

ただ、その使者の言葉は、俺を再び驚愕させるに十分だった。

「はあっ? ……、いや、ごめん。もう一度言ってくれるかな?」

俺は思わず、彼らの戦功を褒める前に、驚きのあまり変な声を出してしまった。

「はい、イシュタル方面では捕虜からの聞き取りを含め、現時点で以下の戦果が確認できております。

鉄騎兵は3,500名を討ち取り、負傷者含め捕虜として約2,000名を確保しております。

歩兵は5,800名を討ち取り、負傷者含め捕虜として約4,300名を確保済みです。

なお、鉄騎兵1,500余名、歩兵1,900余名が分散して領内を逃亡中ですが、彼らに退路はありません。

そのため順次、戦死者数と捕虜の数は増えていくと思われます」

「……」

いや、確かにそうだ。既にゴーマン伯爵からも戦況報告を受け、イシュタル方面では19,000名もの敵軍に勝った。そのことは聞いていた。

ゆっくり考えれば、敵兵力を撃退し、それを袋の鼠にしたこと、これは19,000名を全滅させたという意味に等しい。そこから第一皇子の捕縛作戦が始まり、色々あって……、敵の戦死者や、捕虜の数にまで頭が回っていなかった。

なんか……、アイギス方面と比べて、とんでもない戦果なんですけど……

「それでその……、食料や馬の飼葉、その他医薬品や聖魔法士たちの数が全く足りません。

どうか、大至急ご支援の手をいただきたい、そう司令官バウナー準男爵より言付かっております」

6,300名の負傷者及び捕虜って……、イシュタルだけで支え切れるもんじゃない。

負傷者の救護には恐らく、マリアンヌとラナトリアの、女神コンビが中心となって無双しているのだろうけど……

しかもこの数は更に増える可能性が高い。最大あと3,400名が上乗せされる……

防衛部隊より捕虜の数が多いって、そもそもあり得ない話だけど……

兄さん率いる辺境騎士団6,000騎の食い扶持も必要になってくるし、早急に対処しないと!

「わ、分かった! 大至急物資と人員を送る。それまでなんとか支えてほしい。

そして、イシュタルの皆には感謝を、最大限の感謝を、そう伝えてくれないかな?」

そう言って俺は周囲を見渡した。

「取り急ぎ、アイギスの物資を大至急送るので、バルトはその任を!

テイグーンのミザリーには使者を送り、ガイアの物資も含め、こちらに大至急輸送をするように。

ディモスにも同様に使者を送り、彼方は通商ルートを使って直接イシュタルに送らせて欲しい」

そしてもうひとつ、大事なことを思い出した。

「商人たちに戦果と戦況を解禁する。きっと彼らも、この商機を逃さないよう、協力してくれるはずだ。

せいぜい派手に、喧伝してやるといい」

俺から第三皇子陣営のジークハルトに使者を送らなくとも、恐らく商人たちが勝手に動き出すだろう。

きっと俺たちが伝えるより早く、こちらの勝利が先方に伝わるに違いない。

果たして彼は、盟約通り動いてくれるだろうか?

今の時点では、彼らが素直に軍を引いてくれるかは、まだ分からない。

ただ、交渉材料として、ほぼ完ぺきと言えるほど、此方の手札は揃った。

後は、この南部戦線の幕引きだけだ!

中央軍、寄せ集めの南部貴族の部隊だが、うまくやれているのだろうか?

<参考>

◆第一皇子陣営本隊(アイギス方面)

◇鉄騎兵

戦死者数  : 500名

負傷(捕虜):1,000名

逃走中   :1,500名

◇歩兵

戦死者数  :2,000名

負傷(捕虜):1,500名

逃走中   :4,500名

◆別動隊(イシュタル方面)

◇鉄騎兵

・イシュタル攻防戦(ダブリン戦術)

戦死者数  :2,500名

負傷(捕虜):1,000名→800名

一時撤退  :3,500名

・最終攻防戦

戦死者数  :1,000名

負傷(捕虜): 800名

逃走中   :1,500名

◇歩兵

・関門戦

戦死者数  :1,000名

負傷    :1,000名(後日捕虜)

一時撤退  :10,000名

・第一回総攻撃

戦死者数  : 800名

負傷(捕虜): 500名

一時撤退  :8,700名

・最終攻防戦

戦死者数  :4,000名

負傷(捕虜):2,800名

逃走中   :1,900名

◇その他

・帝国軍負傷者宿営地

鉄騎兵捕虜 : 400名

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『帝国軍……撤退す』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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