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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 306

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タクヒールらが、遠くから城壁上の各所で酒を飲む公国反乱軍の敗残兵たちを、呆気にとられて見ていた時、同じように彼らの様子を遠巻きに伺い、ほくそ笑んでいた者たちがいた。

「元締め、旦那の言っていた通りですね。本当に奴らときたら、こんな事態に関わらず城壁の守備もそっちのけで、酒を飲んでますぜ」

「ああ、そうだな。旦那から『こっそり食事と共に、酒樽を各所に置いて来い』、そう言われた時は不思議でならなかったが……」

「今回の戦、奴らには大義などないからな。あるのは欲だけだ。上がそうだから、下も見習うものだ。

奴らはこれまでの敗戦で王国軍、いや、魔境伯軍の恐ろしさが身に染みて分かっているだろう。

戦いの恐怖と未来への不安を紛らわせるため、ちょっとは酒でも飲みたくなるさ。

統制する者もたしなめる者もないなか、飲み始めると抑えが効かなくなる。奴らは酒に溺れ、もはや兵士ではなく野盗と同じに成り下がると言う訳だ」

そう、完璧に勝利できると思っていたクレイラットでの敗戦、そして、鉄壁の防御と信じていた関門すら、いとも容易く打ち破られ、反乱軍の兵士たちは壊走してサラームへ逃げ込んだ経緯がある。

この過程で、軍を率いていた上層部は壊滅し、サラームの守備兵を10倍以上も上回る数の兵が逃げ込んで来たため、指揮命令系統は乱れ、全く統制が取れない状態になっていた。

そのため、ザハークがタクヒールへの報告に上げていた通り、町では兵たちの狼藉、略奪や暴行が横行し、収拾がつかなくなっていた。

そしてこの日、ザハークを通じてラファールの依頼を受けた街の有力者たちは、陣中見舞いと称し、食事と酒を彼らに運んでいた。

「ところで街の者たちの避難は?」

「旦那の指示通り、正門とこの裏門一帯は日が落ちると同時に、目立たぬように避難させましたぜ。

あと、駐留兵の詰め所など、戦になりそうな場所も同じく」

「そうか、助かるよ。で、ザハーク、奴らの背中から火を付けて回る者たちは?」

「それはウチの配下から50名ほどが、合図によって動きますよ」

「ふむ……、できる限り、戦禍を広げぬために手は借りたが、彼らにも決して無理はさせんようにな」

「ははは、俺の配下はみな一癖も二癖もある奴らばかり、命知らずのならず者でさぁ。

逆に遠慮や用心、手加減なんて言えば、却って戸惑っちまいますよ」

「元締めのところの男たちなら、確かに違ぇねぇ」

ザハークとハリムは声を上げて笑った。

「そうか……、今後はそういった男たちを含め、まっとうに働く意思のある者は、魔境伯がまとめて拾ってくださる。

こんな山賊顔の荒くれ者ですら、今や貴族様だからな……」

ラファールは自嘲気味に笑った。

彼自身、魔境伯から諜報を任されている立場上、信頼できる有能な仲間はもっと欲しいと思っている。

新しく魔境伯の陣営に身を投じたザハークの力量は、彼の期待を十分に越えるものだった。

「さて、俺たちもそろそろ動くとするか? 合図はどうだ?」

「はい、魔境伯領特産の燈火を、城壁の各所に吊るしております。こちらの準備は万端であること、間もなく行動が開始されることは、魔境伯に伝わっていると思います」

「そうか、ではそろそろ始めるか?」

そう言ったラファールは、城壁上で杯を交わす反乱軍の兵士たちを、憐れみを持った目で見つめた。

ラファールの予測した通り、彼らは戦いの恐怖を忘れるため、各所で酒を煽りながら、恐怖をうち払うために、カラ元気で口々に豪語していた。

「サラームの街は、魔物の襲撃に備えて防御も固い。数千の敵軍でも落とすことなど不可能だ!

だから俺たちは、固く城門を閉ざし、安心して酒でも飲んで、ただ援軍を待っていればいいってことよ」

「ははは、王国軍の奴らはたかが5,000前後、国境を空にしてここに押し寄せる訳にもいかんよ。

そうなれば数はもっと減る。つまり俺たちの仕事はもうこれで終わり、いや、もう沢山だな」

「もし奴らが全力で攻めてきても、逃げ場もなく袋の鼠となるぜ。いや、俺はそうあって欲しいな。

調子に乗った奴らにも、思い知らせてやる必要があるからな。死んじまった仲間の仇を取ってやる」

恐怖を紛らわせるため酒杯を煽り、自身に都合の良い未来を語る彼らは、暗闇のなかで密かに攻撃準備を整え、徐々に接近するタクヒールたちに気付きようもなかった。

そして突然、彼らとは反対方向、正門側の方向から鬨の声が上がった。

「て、敵襲だと?」

「ど、どこだ? 一体、誰が襲ってきたんだ?」

「正門だ」

「いや、あの声はもう、正門を越えて街の中だぞ!」

「カイル王国軍が、二万の大軍で押し寄せたぞ!」

「に、にに二万だと? そんな馬鹿な?」

「奴らは既に正門を落とし、街の中に入ったぞ!」

「何だと? そんな……」

「さっさと逃げろ! 敵うわけないだろうが!」

「もう駄目だぁ、フェアリーまで撤退しろ」

「ど、どういう事だ? 何が……、起こっている?」

狼狽する彼らは、兵士たち以外に切迫した事態を煽る、ザハーク配下の者たちの声に惑わされた。

そして、扇動者たちは二段階目の行動に移った。

「おい、誰だ! 勝手に城門を開けようとしている奴は」

「知るか! 二万相手に俺たちで勝てる訳もないだろうが」

「戦いたい奴は、せいぜいここで頑張ってくれ。俺たちが無事に逃げる時間を稼いでくれや!」

「くっ、俺は……、逃げ遅れてたまるか!」

まともな指揮系統もなく、酒の入っていた彼らは、冷静な判断すら下す余裕もなかった。

そして、ザハークの配下が敵兵に扮して誘導しているのだから猶更だ。

先ほどまで仲間の行動を咎めていた者でさえ、いつの間にか城門が開き切ると、我先に街の外へと走り出していた。

そう、タクヒールらが迎撃態勢を整えている、暗闇に向かって……

「本当に門が開きましたな。しかも潰走してわざわざ此方の陣に向かって……、ラファール殿の手並み、見事です」

「フォルク! 後ろの連絡兵に下命! レイアの合図で三打開始!

レイアは俺の指示で、奴らに向かって合図をぶっ放せ」

俺は城門を出て、こちら側へと駆けてくる兵士たちをじっと見つめていた。

俺たちと城門までの距離は約500メル、彼らの先頭が100メルを切るまで……

「対閃光防御、鐘! 準備をっ!」

俺の指示を聞き、後列の約1,000名は、或る者は盾で前方視界を隠し、或る者は目を手で覆った。

俺たち先頭の者は、ガラスを煤で黒くした、簡易ゴーグルを掛けた。

こうすれば、閃光に浮かび上がる敵軍の姿を、はっきり視認できるからだ。

この後放たれる矢を誘導するためにも。

「レイア、今!」

俺の掛け声とともに、此方に向かって駆け出してくる者たちは、正面から突如出現した眩い光に飲み込まれた。

「がぁっ!」

「ま、眩しい、頭が割れるようだ」

「目が、目が見えん」

狼狽する彼らに対し、鐘の三打目に合わせて一斉にクロスボウの攻撃が襲った。

王都やクレイラットから、援軍として此方に来た者たちは、全員がクレイラットにてクロスボウを受領していた。ただ引き金さえ引くことができれば、誘導はブラントとフォルクが風魔法で行ってくれる。そのため、1,000本近い矢が一斉に彼らに降り注いだのだ。

「これよりサラームに突入する。我に、続け!」

俺たちは矢を受けて混乱し、壊滅状態となった敵軍を薙ぎ払い、城門を潜ると、先に潜入していたラファールやザハーク、ハリムたちと合流し、一気に街を制圧していった。

一方正門側でも、突然の敵軍の出現と、城壁内の破壊工作により混乱を極め、まともな対処すらできない間に、裏門を制圧した俺たちが正門側まで押し寄せ、彼らは武器を捨てて降伏した。

本来なら、それなりに時間と犠牲を伴う筈であったサラーム攻略は、一夜にしてほぼ犠牲なく完勝という形で終結した。

もちろん、この結果はザハークやハリムなど、街の中に協力者が居たからこその話だ。

制圧が完了し、街に一角に臨時の駐留本部を設けると、俺は主だった者を集め今後の方針を定めることにした。

「先ずは全将兵に徹底してもらいたい。

略奪、暴行や街の住民に迷惑を掛けることは、固く戒めるようように! 麾下の兵たちに徹底させろ!

これには降伏した敵兵も含まれる。狼藉を働き王国の名誉を汚した者は、身分を問わず厳罰に処するからな。俺に二言はないぞ!」

そう言って俺は集まった者たちを見回した。

魔境騎士団には、日頃からそういうことを徹底しているので、恐らく何も心配ない。

王都騎士団第三軍も、多分大丈夫だろう。

唯一の心配は、最後に援軍として参加した千名の歩兵部隊だ。

「良いなお前たち、クラリス殿下の名誉を汚すこと、それは死より重い罪だと理解しろよ」

俺は敢えて、高圧的に宣言したが、団長も嬉しそうに頷いていた。きっと俺と思いは同じなのだろう。

なんせ、捕虜の扱いなどに関しては、カイル王国でも俺たちと、そしてハミッシュ辺境伯らが常識外であり、通常なら占領地での略奪も、兵士たちのガス抜きとして目をつぶられているのだから……

「団長、ラファール、敵軍の現状は?」

「ヴァイス団長とも確認を進めておりますが、暫定で200名近くを討ち取り、600名近くが投降または負傷して捕虜となっています。未だ街の中に逃げ込んでいる者は100名程度でしょう。

ただ、100名前後は、どさくさに紛れ、街の外に逃亡しているかもしれません」

「この100名、ちょっと厄介ですな。

我々がサラームを占拠したことは、いずれ知れるにしろ、それはできる限り後であってほしい。

少しでも稼げる時間は、稼いでおきたい……」

団長の言葉を受け、ハリムと目を合わせたザハークが恐る恐る手を挙げた。

「申し訳ありません。街から繋がる街道、北に50名、南に50名、西の船着場に100名ほど潜ませておりまして、逃げ散った奴らの剥ぎ取りを行っております。

俺たちは、王女殿下の名誉を……、汚してしまいましたか?」

蒼くなった彼らの神妙な言葉に、俺と団長は感心した後、思わず吹き出しそうになってしまった。

「ザハーク、この戦いが始まる前、俺はこんなことを依頼していたと思うよ。

サラームから逃亡する敵兵を、無理のない範囲で捕らえ、投降を拒んだ者は対処を任せると。

人々を動かす対価を払うことができないが、逃亡兵の所持品を現物支給すると……、ね。

まぁこの先は、投降した者は丁重に扱い、こちらに引き渡してほしいけど」

そう言って、青い顔をした彼にウィンクした。

もちろんそんな依頼はしていないが、彼の機転が俺たちの一助となったのも事実だ。

まして彼らは、街を荒らされた被害者であり、公国人だし。

「取り急ぎ、歩兵1,000名は明日まで防壁の警戒に配し、250名ずつ交代で休息させてほしい。

団長、魔境騎士団はこの街の周辺警戒と休息を交代でお願いします。

王都騎士団は、街の後始末と治安維持、それらを行いつつ、交代で休息させてほしい。

日が昇れば騎馬隊は全て、各方面に進出してもらうので、それに備えることも忘れずに」

そして俺は、ザハークとハリム、そして彼らが連れてきた街の代表者たちの前に進み出た。

「この度はこの街を開放するため、また、フェアラート国王の援軍依頼に則って行動したこととはいえ、この街を戦禍に巻き込んでしまったこと、深くお詫びします。

街の修復に関し、こちらでもできる限り協力させていただきます。対価をお支払いするので、人足の手配をお願いできますか?

また、物資の調達や個人の買い物は、真っ当な対価で行いたいと思います。ただ、不慣れな俺たちに対し、この街の慣習である段階を踏んだ交渉だけは、どうか勘弁してほしいです」

俺の言葉に表情を和らげていた彼らは、俺の最後の言葉に皆、笑い声を上げた。

そう、ここの交渉が前提の買い物、あれだけは勘弁してほしかった。

まぁそれも、ザハークやハリムを通せば問題ないが、駐留する以上、兵士たちが個人的に買う場合もあるだろう。

略奪や押し買いを禁じた手前、兵士たちが不慣れな為に、買い物でぼったくられることは避けたかった。

「街を狼藉者たちから解放していただいたというのに、有難い仰せです。改めて御礼申し上げます。

街の住民は皆、多大なる恩を感じております。なのでお買い物に関して、ご心配には及びませんが、我らからも通達を出しておきましょう。

そして、街に潜んだ狼藉者たちは、必ず我々で炙り出して、捕縛いたします」

「ザハーク、ハリムやティア商会のみんな、今回の戦いでの一連の功績は、公式記録に記載するものとし、いずれその功績に相応しい、対価を払うよ。

差し当たり今は、兵士たちの食事、この先の糧食について、二人の商会に発注するので、手配を一任したいからよろしくね」

「寛大なお言葉ありがとうございます」

「いつも本当にありがとうございます」

二人は感激して平伏した。

その様子を見た街の代表者たちも、安堵した表情で平伏した。

後日、フェアラート公国の中に唯一存在するカイル王国領として、サラームはこの時に端を発し、自由貿易都市として大きく発展し、魔境伯とも緊密な関係を保ち続けるのだが、詳細はまた後日に語られることになるだろう。

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『王都決戦』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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