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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 318

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地下迷宮へと続く洞窟の入り口から少し離れた場所では、悲痛な思いで主君の帰りを待ち構えている者たちがいた。

そう、決して生きては戻って来ることの無い主君を……

そして、悲しみに暮れる彼らの視線の先には、今まさに洞窟から出てこようとする仲間の姿が映った。

彼らは、ゆっくりとした足取りで近くまで戻って来ると、先頭の男は周囲を見回して口を開いた。

「兵が少なくなっているようだが、アイヤールよ、何かあったのか?」

「……、ああ、閣下の仰せに従い、他に敵の逃げ場が無いか、探索に出している。此処には今、30名ほどが残り、閣下のお帰りをお待ちしているだけだ」

「そうか……」

(30対16なら奇襲で十分だな。リュグナー様のお手を煩わすこともなかったわ)

不逞な思いとは別に、短く答えた男の口角が、微妙に上がった。

「それより、どうだったのだ? 閣下は……、見事本懐を遂げられたのか?」

「ああ、我らも数名やられてしまったが……、本懐は遂げられた。首魁共と中に潜む残兵を全て討ち取られたあと……、誠に見事な、ご最期であった」

淡々とそう告げた男や、彼と共に地下迷宮から出てきた兵たちは、激戦を経て来たことを物語るように、全身に返り血を浴びていた。

「そうか……、閣下は……、本懐を遂げられたのだな。お前たちも閣下のご最後を見届けてくれたのか?」

アイヤールの絞り出すような声に、洞窟の中に同行していた兵たちは、無表情なまま黙って頷いた。

「そうか……、頼む。我らにも、閣下に最後の別れをさせてくれないか?」

アイヤールにそう言われた男は、持ち帰った主君の御首級を手渡した。

そして、アイヤールは膝を付くと丁寧に覆いを解き、主人と対面した。

「!!!」

キリアスの目は……、何かを訴えるかのように、死してもなお、大きく見開かれていた。

それを見て、アイヤールは泣き崩れる。

「閣下っ! 本懐を……、さぞ……、ご無念だったでしょう……、確かに……、承りましたぞ!」

アイヤールを始め、待機していた兵たちも皆、嗚咽を漏らしながら泣き崩れている。

それを冷めた目で見ていた男は、静かに手を上げた。

同時に15名の男たちが、無表情のまま静かに剣を抜こうと柄に手をやった。

彼らの不意を襲うために……

その時、突如として顔を上げたアイヤールは、大きく右手を挙げて叫んだ。

「撃てっ! 裏切り者を許すなっ!」

彼らの背後で、岩陰に潜んでいた50名の兵士たちが一斉に姿を現すと、予め装填されていたクロスボウの矢を放った。

味方であるはずの、16名の兵士たちに向かって……

「なっ! 何だとっ」

短い悲鳴を上げて、もう一人の腹心だった男は、全身に何本もの矢を浴びて絶命した。

アイヤールは、目の前で剣を抜き襲い掛かろうとしていた兵を、素早い踏み込みと斬撃で切り払った。

「一人残らず切り捨てろっ!」

アイヤールの指示に従い動き出した80名の兵士たちも、彼に倣って斬撃を繰り出した。

本来であれば、不意を突き彼らを亡き者にしようとしていた者たちは、逆に思わぬ奇襲を受けて、次々に討たれていった。

アイヤールは死する前のキリアスから、あることを内々に言い含められていた。

『私が本懐を成し遂げた暁には、潔く目を閉じて自決する。だが……、そうでない場合は、たとえ死しても眼を閉じぬつもりだ。お前だけにこの遺言を託す。

奴らは決して油断のならん者たちだ。無念にも私が討ち漏らした場合……、すまぬが後始末を頼む』

アイヤールは、命を賭したキリアスの遺言を受け取り、主君の思いを晴らすべく行動に出た。

「これより洞窟内に潜む敵を殲滅する。全員、ここで閣下の無念を晴らすぞ!」

そう言うと、目の前の屍を踏み越え、洞窟に向かって突進を始めた。

一方で洞窟の入り口、その少し開けた付近では、リュグナーの意を受けた兵たちが密かに展開していた。

彼らは地上に展開するキリアスの残兵を殲滅する命を受けた、リュグナーの直属の元ヒヨリミ兵で、その数200名あまり。

「ちっ、不意を衝くことに失敗したようだな。役に立たん奴らめ」

そう言うと予想外の展開に少し驚きつつも、数で勝る兵力でキリアス兵を押し潰すため、打って出た。

「わが主君の仇!」

「一兵たりとも逃がさん!」

アイヤールたちは口々にそう叫びながら襲い掛かった。

80対200、数字上では圧倒的な差だが、アイヤール率いる隊はキリアス軍最強かつ、最も忠誠心の高い部隊だった。

それ故に、主君の不名誉な裏切りにも、最後まで脱落することなく付き従っていたのだが……

彼らは主君の無念を晴らすべく、全員が死兵となって戦った。

そのため、圧倒的多数に押されても頑強に持ちこたえ、むしろ押し返そうとさえしていた。

キリアス軍の馬蹄の跡、そして目印らしきものを追ってコーネル領深くに進んだタクヒールたちは、ハストブルグ辺境伯領との領境に広がる岩山近くまで進出していた。

「前方で喊声! どうやら戦闘が始まっているようです」

「シャノン、方角は?」

「この目印に従って前方、ここからは真っすぐ、約1キルほど先です!」

「全員、一旦この地でエストールボウを装填。安全装置を忘れるなよ! 装填後に一気に駆けるっ!

レイア、俺が馬上で右腕を振り上げたら距離を確認、振り下ろす方角にありったけの光魔法を!」

ここまで先を急いで来た彼らは、まだヴァイス率いる魔境騎士団本隊と合流できていない。

更に途中で各所に連絡兵を放っていたため、タクヒールの軍勢は百騎を切っていた。

それでも迷いは無かった。

「これより、今戦いの最中にある友軍に加勢する。全軍、突撃!」

タクヒールは即座に決断し、一斉に駆け出した。

軽装騎兵の全力疾走なら、1キルなどあっという間だ。

戦闘域までおよそ500メルの地点まで来ると、彼らにも戦いの様相が視認できるようになった。

ここでタクヒールは、ひとつの賭けに出た。

敵の巣窟は山岳地帯の一角にある洞窟の中、キリアスの手紙にはそう書かれていた。ならば、山を背にしている軍勢、此方に向かって攻め寄せている者たちは、敵軍の可能性が高い。

疾走する騎馬の脚を緩めると、彼は右手を大きく振り上げた。親指を曲げ、4という数字を示して。

そして、レイアが頷くのを確認すると、勢いよく振り下ろした。

その瞬間、彼ら前方400メルの一帯には、眩い光の帯が左右に広がった。

「ぐわっ! ま、眩しい」

「目が……、見えんっ」

「がぁぁっ、頭が割れそうだっ!」

「なんだ? この光は?」

「ゆ、友軍なのか?」

「まさか……、魔境伯?」

戦いの最中にある両軍の反応は大きく違っていた。

正面から光を見た者たち、彼らは閃光で視界を奪われ、ある者は悶絶し混乱状態になっていた。

背後から光を受けた者たち、彼らは事態の推移は分からないものの、直観的に援軍の到来を察していた。

「シャノン!」

タクヒールが叫ぶと同時に、その意図を察したシャノンが、馬をピタリと寄せて彼に並走する。

この様な閃光を目にすることも、戦術のひとつとして以前より十分に訓練が重ねられていたため、彼らは直前に馬足を緩めること、馬を落ち着かせる対処も心得ており、混乱すらなかった。

そして、シャノンの音魔法で増幅されたタクヒールの声が、戦う者たちの間に響き渡った。

「友軍に告げる、こちらは魔境伯軍だ、今より加勢する。我らの進路を開けよ」

既に300メルを切るまでに迫った彼らの前で、キリアス軍は即座に反応し、左右に移動して進路を開けた。

これでタクヒールの予測は、確信へと変わった。

「鐘、用意! 全騎、常足での射撃! 三打始めっ! 安全装置を外せっ!」

敵軍の200メル手前で、鐘が三打目を響かせるのと同時に、風魔法で導かれた90本近い矢が一斉にリュグナー配下の兵たちに襲い掛かった。

「畳みかけろっ! 全騎、突撃っ!」

視界もままならない中、矢を浴びて混乱する200名の軍勢は、騎馬の突撃を受けて大きく崩れた。

更に、進路を譲り左右に展開していたキリアス軍は、それぞれが半包囲する形でその動きに連携する。

「よいか、退路を塞ぎ一兵とも逃してはならん。諸悪の根絶、これこそが閣下のご遺言だ!」

アイヤールは眦を上げて、リュグナーの兵に斬りかかる。死兵となったキリアス兵もそれに続く。

戦いが始まる時点では170対200、しかし、無防備に矢を受け、騎馬の突撃で蹂躙されたリュグナーの兵は、その数を大きく数を減らし、今や圧倒的に不利となった状況下で、次々と討たれていった。

山側に陣取っていた敵軍を掃討したのち、俺の前には80名ほどの精兵が整列して跪いた。

「魔境伯閣下とお見受けいたします。先ずはご助力、我ら一同心から感謝申し上げます。

罪深き我らではございますが、今少し命を長らえること、お目こぼしいただきますようお願いします」

「卿とは以前に合ったことが有るな? 即席とはいえ見事な連携だった。で……、キリアス卿は?」

「閣下は……、罪を償うために……、ですが、その道半ばで……。

我らはこれより、閣下のご遺言を果たすため、この命、捧げたく思っております。どうかっ!」

そう答えた男は、涙を流しながら俺に首級を捧げた。

道半ば……、ということは、まだ首魁どもはこの中に、そういうことか?

「では、奴らの根城をこれより殲滅する。確か……、アイヤールだったな? 先陣を任せるゆえ、主君の名誉を全うするがいい」

「はっ! ありがとうございますっ」

直ちに掃討戦が再開された。

彼らは事前に準備していたのか、洞窟の入り口に薪を積み上げ、一斉に火を掛けた。

風魔法士の力で、その煙は風によって洞窟内部まで導かれていく。

同時に、シャノンに命じ、内部に潜む者たちには降伏を勧告し、首魁以外は一命を助ける旨を伝えたが、それは虚しいだけだった。

その後、散発的に中から飛び出し、決して敵わない抵抗を試みる者が相次いだ。

「アイヤール、他に出口は?」

「申し訳ありません。閣下も我らも、そこまでは知る由もなく……」

『少し出遅れたな。

キリアスが自分で決着を望む短慮に走らなければ……

もう少し多くの兵を率いて来れたら……。

俺たちは十分な軍勢を手配し、それこそ山の反対側まで蟻一匹逃さない包囲網を敷けたのだが……』

俺は心に浮かんだ言葉を、なんとか飲み込んだ。

この掃討戦は後味の悪い戦となったが、翌日まで続き、洞穴の中に作られた闇の根城は壊滅した。

この頃になると、団長以外も急を聞いた軍が駆けつけ始めていた。

俺自身、これで首魁共の全てを討てたとは思っていない。

俺であれば、こんな袋の鼠となる拠点、必ずどこかに退路を確保するだろう。

まして、この国の中で永年に渡り蠢動していた彼らなら、そう言った意味でも用心深いはずだ。

ただ、彼らは拠点を急襲されたことで、その財貨は押収され、手足となる者たちの多くを失った。

それにより、恐らくだが組織的な行動はできなくなっていることだろう。

ここに至って、闇の蠢動が白日の元に晒された今、これまで以上に用心しつつ、粛々と対応を進めればいい。そう思って、ひとまず納得することにした。

「アイヤール、俺はキリアス卿の手紙に従い、残された兵、一族を保護するよう努める。

だが、それぞれ罪を償ってもらう必要もある。お前は彼らを守るために生き、死ぬことを許さん!

これが俺から与える処罰だ」

戦いが終わり、残ったキリアス兵の助命を嘆願する代わりに、死してキリアスの後を追おうとしていたアイヤールに対し、俺はそう言い放った。

この時俺は、前回の歴史で俺が最後に取った行動、残った兵士たちや領民を救うために、ヴァイス軍団長に申し出たことを思い出していた。

「お前には『最後の最後で主君を売った裏切り者』そんな汚名を背負わせることになるだろう。

その忠義に対し申し訳ないが『キリアス卿によって討たれた者たちの無念』、それをお前たちは背負っていかなければならないことも事実だ。

お前には、最後までキリアスに付き従った者たちの、未来を、そして名誉を背負ってやってほしい。

俺は、そんなお前たちの忠義を、このまま無為にしたくない」

泣き崩れる彼の背に手をやり、今後彼らを自らの配下として、守ってやることを俺は決断した。

翌日、俺は彼らとキリアスの首級を王都に送った。

併せて送った狸爺への書簡には……

・今回の事の顛末とキリアスが知らせた内容

・反逆者キリアスを討った功績は彼らにあること

・俺への功績は一切不要とし、彼らの罪を減じてほしいこと

・彼ら80名は、この先は魔境伯軍にて預かりたいこと

・闇に対する警戒の再徹底と、国内の再調査の要望

そう言った内容を書き添えていた。

こうして、本当の意味で今回の一連の戦いは、その全てが幕を下ろした。

後日、アイヤールを部隊長に据え、彼ら80名はタクヒールに召し抱えられた。

それに加え、裏切りに最初から異を唱え、同胞と戦うことを拒否して離反したキリアス軍の者たち、辺境騎士団に所属し、同胞と戦ったキリアス兵たちを、タクヒールは積極的に登用した。

周囲には不安の声を上げる者もいたらしいが、彼は笑ってこう答えたという。

「本当に信用できるのは、最後まで忠義を全うした者たちと、主君の不当な命にハナから従わなかった者たちだけだ。

状況に流されて裏切り、そして今度は主君を見捨てたような奴を俺は信用しない。

それに……、俺は不器用な奴が大好きだからね」

その言葉に従い、元キリアス軍からなる500名の新部隊が、魔境騎士団に編入されたのは、翌年、カイル歴514年の年が明けて間もなくのことだった。

いつもご覧いただきありがとうございます。

次回は『論功行賞① 序幕』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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