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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 362

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カイル王国の王都カイラールでは、王国全土から強者たちが集まったクロスボウの競技会も最終日を迎え、その最後を飾る宴が盛大に催されていた。

同じ時刻、王都の第三区にある巨大な一角、大聖堂を始めとする中央教会関連施設、医術学校や施療院を含む広大な敷地のなか、最奥にある最高法院の一室に集まり、議論を交わす男たちがいた。

「今回王都に来訪したウエストライツ公王より申し出のあった面談、その意図について其方らはどう思うか」

「はっ! 今回公王は王都にローザ名誉司教とグレース教区長を伴って参りました。

明日の面談を取り付けてきたグレースの申し出によれば、恐らくは新領土における教会の展開に関わる相談かと……」

「ふふふ、奴も勤勉よな。

新たに配下の教区を増やそうと躍起になっておるということでしょうか?」

「そのようですな。奴が公王に張り付いてからというもの、大きな貢献を示して参りましたからな。

総大司教猊下、奴が旧帝国領にも手を広げた暁には、これまでの功績をあるため、枢機卿に任じるというのは如何でしょうか?」

「ふむ……、奴の功績は十分ではあるが、いささか問題もある。奴は所詮は氏族の中でも末端の出自だからな」

「枢機卿よ、猊下の仰る通りだ。

そもそも奴は貴様の系統ではないか? 同格にすれば其方が得ていたものも、奴自身の功績となるが良いのか?」

「それは困りましたな……」

そうは答えたが、枢機卿はさほど困っているようには見えなかった。

そのため大司教は説明を加えた。

「そもそも奴を引き上げるとなると、長年の慣習を破り枢機卿の枠を増やすか、五名の枢機卿の誰かを解任せねばならんでな」

中央教会では、以下の序列が定められていた。

(役職)       (規定数及び王国での待遇)

総大司教(聖の氏族長):1名 公爵待遇

大司教(聖の氏族)  :3名 辺境伯〜侯爵待遇

枢機卿(聖の氏族)  :5名 伯爵待遇

中央教会特任名誉司教 :現状1名 伯爵待遇

教区長(司教)    :8名 子爵待遇

中央教会司教     :10名 男爵待遇

地方教会司教     :20名 準男爵待遇

中央教会司祭     :30名 騎士爵待遇

地方教会司祭     :50名 平民

神父         :200名以上 平民

初代カイル王との密約により、固有の領土は持たないが、聖の氏族は他の氏族と同様に貴族の待遇を受けつつ各貴族の領地に根を張り、確固たる勢力と収入源を確保していた。

全ての貴族領に教会を置くことで、中央教会は神の御心への感謝と称して金貨を収集し、その傍らで各地の情報を収集している。

彼らはその情報を時の権力者や対抗勢力に、対価を得て売り払い、自らの懐を暖めていた……

「総大司教猊下、大司教様、私の提案は少し異なります。

定員はあくまでも王国内に限ったもの。ここは変わらず氏族の中枢が占めればよいのです。

例えば、『辺境枢機卿』などを新たに設ければ宜しいかと。勿論その権限は枢機卿の一段下で」

そう提案すると、枢機卿と呼ばれた者は微妙に口角を上げつつも、含み笑いを隠した。

「奴には喜捨を集める才があります。

よほど上手く公王に取り入ったのでしょう。なので餌を与えて益々励ませてやれば良いのです。

それが結局我らの利になり、更にその先は……」

「ほほほ、奴の事例を餌にして、北と東の者どもにも励ませるという訳か?」

「はい猊下、集まる喜捨はより多い方がよろしいかと」

「なるほどな、新たに得た地で金貨を集める機会を与える者は、奴に限ったものではない。そう言うことだな?」

「はい、大司教様の仰せの通りです。

我らが神の教えを垂れるべき新しき領土は、何も南に限ったものではございません。北にも東にもございます故」

「ははは、そ奴らにも新たな階位を得るため、いや、維持するために一層励ませると言うわけか?」

「ご賢察の通りです。

ひとたび階位を上げれば、その分だけ神の御心に叶う努力が必要となります。

さもなくば降格も止むなしと……」

「ほほほ、枢機卿よ、其方が一番神の御心に叶う才があるとみえるな。神々も其方の才を愛でられることだろうて」

「はっ、神の御心のままに」

こうして、彼らの議論はある方向へと収束していった。

勿論、タクヒールが考えていることなど、彼らの理解が及ぶ範囲ではない。

所詮権力の構図に胡座をかいた彼らは、自身の想像力の範囲でしかこの先を予測できずにいた。

王都での晩餐会が終わった翌日、俺はローザとグレース司教、そして山吹色のお菓子を運ぶために、シグルとカーラ以外にも数名の従者を伴って中央教会を訪れた。

案内役として先頭を進むのは、中央教会内部を勝手知ったるローザだ。

今の彼女は、中央教会特任名誉司教であり、実権こそないが形式上は教区長であるグレース司教より格上だ。

道ゆく間、次々と教会関係者が道を開け、ローザに対して恭しく立礼していた。

そして建物の内部は奥に進むほど絢爛豪華となり、贅を凝らしたものとなっていった。

「ってか、中の豪華さもびっくりだけど、ローザの出世ぶりにも驚いたな」

名誉職とはいえ、教会で彼女の上位者はたった9名しか居ない。

ローザ曰く、彼女より上の階位が隔絶した高みにあるらしいが……

ただ、彼女が教会を通じてこれまでに上げた功績もまた比類なきものだった。

・古より人々を苦しめて来た疫病の原因を解明

・失われていた治療法を発見して展開したこと

・疫病の発生を予期し、全土に警鐘を鳴らしたこと

・命の危険を顧みず、陣頭に立って病と戦ったこと

・疫病対応で教会の重要性を際立たせ、その価値を示したこと

結果として万を超える規模の人命を救い、その過程で図らずとも教会に対し莫大な富をもたらしていたからだ。

それにもうひとつ、彼女が聖魔法士であることも大きい。

教会が直接抱える聖魔法士の数は10数名でしかないからだ。

そんなローザを取り込みたいと、教会側も躍起になっている。

「この先は私も数度しか来たことかありませんが……、実はあまり好きじゃないんです。

いつも山吹色のお菓子の匂いがして胸焼けしちゃいますからね。それに、彼らと同類と思われるのも嫌なんです……」

だろうな……、誰もが憚りなく『守銭奴』と呼ぶ者たちの総本山だしね。

ローザ自身はその悪評からほど遠い存在だ。

暫くすると、一際豪奢な建物の前に到着し、待ち受けていた案内の者に導かれて、俺たちは奥へと入った。

「あの……、ここから先は従者の方は……」

そう咎められたとき、俺は少しだけ首を振ってこれみよがしに彼らの持つ袋に視線をやった。

すると彼は、何かを了解したかのように満面の笑みを浮かべた。

「なるほど、神の前では誰もが等しく恩恵を受ける機会が与えられます。お付きの方々もどうぞお進みください」

「……」

いや、分かりやす過ぎるやろっ!

この変わり身の早さはなんやねん!

思わず浮かんだ言葉を、俺は苦笑しながら飲み込んだ。

そして、俺たちは案内に従い、贅を尽くした豪華な一室へと案内された。

そこには低いテーブルを挟んで向かい合った3名ずつの席と、俺たちの席の後ろには何故か大きなテーブルが置かれていた。

まるで、お菓子は此方に……、とでも言われているかの様な、無言の圧力を感じた。

従者たちはカーラの指示に従い、3つの袋だけ手前に、残りの7つは敢えて後ろの隅に置くと、一礼して退室していった。

その後、護衛のシグルとカーラは俺の背後に直立不動で並んだ。

暫くして……

俺たちが入って来たドアとは別の、より豪華な造りのドアが開くと、3人の男たちが入って来た。

そして、俺たちが座っているより明らかに豪華な、テーブルを挟んで向かいの椅子に腰掛けた。

「先ずはウエストライツ公王陛下自らのお越し、誠にありがとうございます。

私は中央教会枢機卿のクレバラスと申します。

我らがマイザー総大司教、グリーディ大司教をご紹介させていただきます」

そう言って開口一番に挨拶して来たのは、まだ30代半ばでなかなか秀麗眉目の枢機卿だった。

ふむ……、守銭奴の代表格であるマイザー総大司教は壮年から老境に入った、一見すると丸顔で無害なお人好しに見える少しふくよかな男、大司教はキツネ目の少し険のある顔つきをしているな。

まぁ一皮剥けば、中身は同じだろうけど。

『クレバラス……、どこかで聞いたことがあるな? どこだっけ?』

「クレバラス枢機卿、以前は大変お世話になりました。

公王陛下、私を医術学校に推薦してくれたのが、当時は司教でいらしたクレバラス枢機卿です」

『なるほど、出世したのか! それで……』

あの当時はまだ司教だった筈だ。僅か6年で枢機卿まで上り詰めたということは、おそらく教会の中でも出世頭なのだろう。

「クレバラス枢機卿、その節は世話になりました。改めて礼を申し上げます。また、マイザー総大司教とグリーディ大司教には初めてご挨拶させていただきます。

今回は急な申し出にも関わらず、快く面談に応じていただいたこと、感謝申し上げます」

俺は敢えて、言葉は丁寧ながら序列を無視して話し掛けた。それには理由がある。

本来なら俺は公王、一国の王だ。王国の臣としての立場もあるが、公爵としてなら筆頭の立場にある。

聖魔法士たちの氏族、その氏族長を受け継ぐ総大司教と言えど、身分は公爵待遇に過ぎない。

本来なら向こうが待ち受け、総大司教自らが挨拶してくるのがこの国、この世界の道理である。

だが俺は敢えて天然を装い、その程度の嫌味で済ませていた。

まぁ……、今のうちはね。

『既に駆け引きは始まっているからだ』

そう思いながら、困惑顔の総大司教に満面の笑みを返してやった。

まぁ正直言って俺は、戦う気満々で此処に来ているからね。

「そ、それで、今回公王陛下が私共をお訪ねいただいた件ですが、我々で何か陛下のお役に立てることがございましょうか?」

「クレバラス枢機卿のご賢察の通りですね。我々は大きな期待を抱き、この場に来ております。

ですが先ずは筋を通させてもらいます」

そう言うと俺は、シグルから金貨が200枚入った大袋を順次受け取り、彼らの前に並べた。

ひとつだけ袋の口を縛る紐を解き、中身を見せて。

「この3袋の金貨は、合計で600枚ございます。

此方は我が国の建国にお力添えいただいた皆様と、グレース教区長の功績に感謝した喜捨です。

どうかお納めください」

こともなげに3袋を差し出したが、敢えて後ろに積んだ袋を見向きもしなかった。

その傍ら、俺は3人をじっくり見つめて、あることを確認した。

総大司教と大司教が、目線で後ろのテーブルに積まれた袋の数を確認していたことを……

さて、彼らもこの先の餌の確認が済んだことだし、残り金貨1,400枚、此処からが勝負だな。

「では挨拶も済んだし、本題に移らせていただきたい。今回は我らの新領土、旧帝国領に展開する教会の件で確認とお願いに参りました」

何だこの2人は。

早速『キター』みたいな表情を一瞬浮かべて、慌てて取り繕っているが……

「その件については、私から申し上げよう。

魔境公には常日頃からグレース教会長がお世話になっていることだしな。

その辺も考慮し、教会としても十分に吟味して検討したいと思っている」

「グリーディ大司教、まだ検討段階なのですか?」

(どうせ検討→確定とするには、山吹色のお菓子……、そんなことだろうな)

「いやはや、新領土を得られたのは魔境公だけではないのでな。お恥ずかしながら教会も人手が足らず、色々と物入りでもあるのだよ」

(優先して欲しければ対価を払うことだ。その後ろの金貨もそのためであろう?

先ずはそこからと言うものだ。勿体振りおって)

「なるほど、大司教の仰る通り色々と問題もありそうですね。それでは先ずはこの場で課題を議論するといたしましょう」

(問題を大きくしているのは貴方らでしょうが! 悪いけど処方箋は直ぐには出さないからね)

「議論も良いが、複数の教会を設立することはあくまでも我らの胸先三寸、いや、神の思し召しとなろうな。先ずはその旨、神に祈られてはどうかな?」

(この小僧は何を間の抜けた話をしてあるのだ? さっさと後ろの金貨も出すが良いわ。

せっかくそのタイミングを言ってやっておるというに……。此奴は少々頭が弱いのか?)

「なるほど、正直な仰りようですね。

ですが器を作ったとしても、中身が伴わなければ困るんですよ。

皆様のお気持ちも見えたことですし、肝心なお話をするとしましょう」

だから、何だ!

その期待に満ちた表情は。

そう簡単に思い通りにさせる訳がないだろう。

では……、本領発揮と行きますか。

俺はいつもの笑いを浮かべると、彼らを見据えた。

戦闘開始だ!

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

中央教会との対決は書いているうちに非常に長くなってしまい、3話構成に変更しました。

もう少しお付き合いくださいね。

次回は『中央教会との対決②』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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