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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 366

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タクヒールらがカイル王国の王都カイラールに滞在している頃、ウエストライツ魔境公国から帝国領を経由し、イストリア皇王国へと向かう交易商人の一行があった。

彼らは30台もの馬車に、食料品と本来は流通が憚られる武具などを満載し、一路皇王国の国境関門を目指していた。

そしてあともう少しで、目指す国境に辿り着くところまで来ていた。

「それにしても……、旦那は大胆なお人ですな。男爵様自らが身をやつし、間諜のようなことをされるとは、思ってもみませんでしたよ」

「ふん、俺に取っては荒事が本業、たまにやむを得ず、それも仕方なく男爵を名乗ることがあるだけだ。

俺とて身の丈に合わないものに、時として困惑しているだけだからな」

そう答えた男は、少し自嘲気味に笑った。

「失礼ながら、変わったお方だ。それに公王さまも……、もちろん、良い意味ですよ」

話が公王に及び、ラファールの視線が鋭くなったのを感じたハンドラーは、慌ててそう補足した。

ただ彼が思うに、公王とてこの男爵と同様、とても不思議なお方であった。

とてもじゃないが一国の王、いや、貴族にすら見えないくらい親しみがあり、それが自然体として振舞われている。

帝国軍の精鋭である第一皇子軍や、フェアラート公国の反乱軍を完膚なきまでに打ちのめした、英雄にも似つかわしくない雰囲気を纏っていたからだ。

『類は友を呼ぶ……、変わり者には変わり者、そういうことか?』

彼は自戒し、この言葉は心の中だけに留めていた。

実はハンドラー自身、この変わり者の男爵と実際に会うのは、今回の同行で三回目だ。

一度目は、ハンドラーがこの先の商売を懸けて、イストリア皇王国の動向を伝えに行ったとき。

二度目は、新たな任務を帯びて皇王国に潜入した後、速報として報告を伝えに行ったとき。

三度目は、今回の旅だ。

一度目の時は、公王との面会の後に切れ者と噂の高い内務卿と、そして彼の三人で今後の打ち合わせを行った。内務卿からは、追加同行者の依頼と契約条件、そして最初の潜入は短期間で行い、カストロ大司教の軍の動向と実勢を探り、報告が欲しいと言われた。

その時ラファールは、時折脱線した話題を振りながら、気さくに話していただけで、ハンドラーもまさか貴族であるとは思わなかった。

二度目の時は、報告のあとラファールに飲みに誘われた。

酒の席での探り合いなど、商人たちにはよくあることだ。だが彼は、単に酒を飲むこと、酒の席でのよもやま話に華を咲かせるだけで、警戒するのが馬鹿らしくなるぐらいだった。

そして何軒か店を梯子したあと、他の客から初めてラファールが貴族であり、男爵の爵位にあることを聞かされ、一気に酔いが吹き飛ぶ思いをさせられていた。

そして三度目、今回の旅でラファールは、道中でも皇王国の酒と女の話しかしなかった。

すっと自然体で気さくな彼の様子に、いつのまにかハンドラーはラファールを旦那と呼んで、同じように気安く接するようになっていた。

「それにしても旦那、今回の積み荷は本当に大丈夫なんですか? 食料はまだしも、これだけの武器を持ち込んで、後で公王様からお叱りを受けても……」

「何か問題か? 商売とは、相手が欲しがる物をできる限り安く仕入れて、できる限り高く売ること、俺はそう考えていたが」

「いや、それはそうなんですが……、いくら内諾を得たとはいえこの量です。

今回横流しした武器が、今度は旦那たちに向けられるかもしれないのですぜ」

「ははは、その剣が俺たちに届かなければ、何の意味も持たないだろう。

それに、今回持ち込んだのは殆どが一般兵の持つ安物、それも傷物ばかりだ。俺たちの腹は痛まんよ」

そういう意味ではない、そう言いかけてハンドラーは諦めた。

あの国の方々は色々と規格外過ぎて、深く考えるとこちらが参ってしまう。

割り切ること、それも商人にとっては必要な素養だ。そう考えることにした。

実は今回持ち込んだ大量の剣も、タクヒールが保管していた、いや、処分に困っていた武具の一部にしか過ぎないことを、ハンドラーは知らなかった。

今や公王となった彼の下には、過去の戦いで得た膨大な量の武器の鹵獲品があったからだ。

・テイグーン戦にてブラッドリー侯爵軍からの鹵獲品

・第一皇子軍が魔物との戦いや敗走過程で遺棄されたもの

・ヒヨリミ子爵軍がガイアやテイグーンで敗れたときに遺棄されたもの

・東国境を巡る戦いで皇王国軍を殲滅した際の鹵獲品

・ブルグの戦いでゴーヨク伯爵軍を壊滅した際の鹵獲品

・第一皇子の軍が全滅に近い敗北を喫した際の鹵獲品

・クレイラッドでの最終決戦、及び西国境の戦いにて遺棄されていたもの

・サラーム攻防戦にて、敗残兵を武装解除した際に鹵獲されたもの

・フェアリー郊外の最終決戦にて、反乱軍を撃破した際に鹵獲されたもの

もちろん、それらの一部は褒賞として配下の者たちにも分配されていたが、得たものの数は余りにも多かった。

帝国との最終決戦後、鹵獲した武器のうち、価値のあるものの一部は、ガイアの鍛冶屋に順次回されて修繕や打ち直しが行われた。

そのために王国各地から鍛冶職人が集まり、ガイアの鍛治街は大きな繁栄を遂げていた。

そしてそれらは、自軍用に供給されたり、商人を通じて販売されて、莫大な収益をもたらしていた。

『どうせ廉価版の剣は、傷物を売っても大した金額にはならないし、こんな物でも金になるのなら、奴らに売りつけてやればいい。ハンドラーの報告では、彼らは圧倒的に武器が足りていないようだしね。

これで上層部の歓心が買えるなら、その後の諜報もやりやすくなるだろう。それに……』

ラファールは、こういったタクヒールの内意も受けていた。

なので実は、主君の命を受け『公式に』横流ししているに過ぎない。

「この土産で以て、上層部と接触できれば、俺にとってはありがたい話さ」

「まぁ……、旦那の仰る通りですけどね」

その件についてラファールは、敢えて多くは語らなかった。

何も知らない方が本人の身を守ることにもなる。そして国としての立場も……

「それにしてもハンドラー、打ち合わせ通りに進めて、お前の商売としては良いのか?」

「ははは、旦那、俺も商人ですよ。取引先を失っても、もっと大きな夢のある取引先が手に入るんだ。

今までは大きな商会の後塵を拝し、隙間しか狙えない俺たちにとって、これは大きな賭けですよ。

なので存分に……、でも対価としての取引は、よろしくお願いしますよ」

「ああ、その点は公王さまもご承知の上だ」

「さて、そろそろ関門ですぜ。旦那、ここからは商人として、頼みますぜ。

最も、横流しに加担するような、悪徳商人の役はうってつけかもしれませんがね」

「ははは、俺にぴったりの役柄じゃねぇか。まぁ任せてくれ」

大任の前に互いに軽口を叩きながら、強い眼差しで関門を見つめ、二人は皇王国国境の関門へと足を踏み入れていった。

イストリア皇王国最南端にある地方都市トライア、ここはかつてグリフォニア帝国との交易窓口として繁栄したが、近年ではかつての隆盛も影を潜め、鄙びた地方都市となっていた。

だが、今やその状況は一変している。

カストロ大司教、今やイストリア正統教国の教皇となった彼がこの街を訪れて以降、近隣より救いを求めた民たちが集まり、教皇からの恵み(食料配給)の恩恵を受けている。

そのため、救世主の降臨した街はかつての勢いを取り戻し、今や活況を極めていた。

「教皇さま、ただいま衛兵の知らせによりますと、猊下の依頼を受けたと申す交易商人が、食料及び武具を満載して街を訪れ、謁見を望んでおりますが、いかが取り計らいますか?」

「交易商人、帝国からの砂糖商人か?」

「はい、ハンドラー商会にございます。どうやら土産として、面白き男をご紹介したいと……」

「おおっ、待ちわびておったわ。手広く商いを行っている商人は多いが、奴のような使える男は少ない。謁見を許すと申し伝え大聖堂にて待たせておけ。我が意に沿う土産であれば良いがな……」

そう言うとカストロは、鷹揚に笑って見せた。

そして間もなく、新たに建造が進んでいる大聖堂の一角に、件の商人たちが招き入れられた。

遅れて教皇たるカストロが、壇上に姿を現した。

「ハンドラーよ。早々に立ち戻ったということは、期待して良いということかな?」

「猊下直々のお言葉である、直答を許す」

側近の者からの指示で、平伏していたハンドラーはゆっくりと頭を上げた。

それでも失礼に当たらぬよう、目線は足元のままだ。

「はい、食料と砂糖はご要望いただいた馬車20台に満載しております。

それと、いささか手こずりましたが一級品の剣を100本ほど……」

「ほう、馬車は30台と聞いたが?」

「おお、流石にお耳が早い。そちらは此処に控えております、ラウルと申す者に関わる荷、我らから猊下に対する心ばかりの手土産にございます」

「ふむ……、神の御心に沿うものであれば良いがな。ラウルと申したか、直答を許す。何を持って参った」

「はっ……」

そう短く答えると、ラウルと呼ばれた男は顔を上げた。

そしてゆっくりと、教皇を見つめて笑みを浮かべた。

「我らは、とある仕入先の縁を持っております。今猊下に必要な物は、神の教えを守る戦士たちに与える、裁きを実現する手段、そう愚考いたしました」

「なるほど、面白い推理だな」

「それ故、新たに聖騎士となった方々に、猊下が下賜されるに相応しい剣を100本、ハンドラー殿に都合いたしました。ですが、猊下を守護せんとする民たちには、まだ足りないと存じます」

「それで剣をどの程度都合してきたのだ?」

「はっ、当面の物として差し当たり1000本ほど、お時間をいただければ更にその数倍は都合できます」

「ほう……」

驚きの言葉を発すると、カストロは目を細めた。

訝しいな……、と。

「帝国内でも剣の需要は逼迫しており、一朝一夕にそれだけの数を手配できるとは、聞いておらんが?」

それも当然だ。

第三皇子の陣営は、新領土の入植と防衛という大義名分のもと、兵力の増強を図っている。

第一皇子の陣営は、内密に兵力を整えようとしていたが、公然と武具は調達できない。

そのため、秘密裏に武具を買い占めていた。

それ故に武具の値段は高騰し、まとまった数の剣を入手することは困難を極めていた。

イストリア皇王国では、剣を持つ歩兵より弓箭兵に重きを置いていたため、国内の生産力も余剰在庫も乏しい。

実はこれがカストロの悩みの種だった。

「はい、世に出ている物は、昨今の情勢により入手は困難な状況と言わざるを得ません。

ですが、世に出ていない物なら話は別です。一般兵向けかつ、多少の傷はあるものですが、それなりにあるところには有るものです」

「となると……、剥ぎ取り品の類か?」

「はい、それらの剥ぎ取り品を、使い道もなく大量に貯蔵して眠らせている国もございます。

私はその倉庫の管理者と誼を結び、手に入れましてございます」

「ふん、横流し品か。我らは神に仕える身。その様な謂れの剣などで喜ぶとでも思ったか!」

ラウルの言葉を聞き、側近の一人が声を荒げた。

周囲に立つ男たちも、ラウルを蔑視することを隠さなかった。

「我らは猊下と神に仕える身。邪な経緯で入手された物は没収し、罪には罰を与えることもできる。

それとも何か、その1,000本を喜捨する代わりに、己の犯した罪に対して神の救いを求めるか?」

「ははは、それもよろしいかと思います。

ですがいささか勿体ないお話ではないでしょうか?」

「どういうことだ?」

「私の申し上げたいことは三点ごさいます。その上で猊下がご判断いただければ、それも神の御心でしょう」

「ほう私にか? 申してみよ。そして其方らは一旦控えておれ」

カストロの言葉で、言葉を荒げていた側近たちは一礼して口をつぐんだ。

「猊下のご慈悲に感謝いたします。

先ほど皆様が仰った手法は、かつての皇王国の教会が行ってきたことと、何ら変わりありません。

それを正す猊下の軍には、そぐわないでしょう」

「ふむ……」

「第二に、武具というものは、どのような手段によって手に入れたかより、どのように行使したか、そこが大切かと思われます。神の導きによって猊下の教えを守る者たちに、その意思を実現する手段を与えること、これが優先されると考えます」

「なるほど、言い得て妙である……、な」

「三点目は、現実的な皆様の『利』でございます。

いま私を裁き商品を取り上げられても、100本と1,000本の剣、それだけでございます。

ですが我らが神に尽くす道を与えていただければ、その数は何倍にも膨れあがりましょう」

「ははは、ラウルと申したか、其方は中々面白い男だな。商人にしては肝も据わっている。

今回に限り、神も敬愛する僕には慈悲を与えてくださるだろう。

そなたの提案に乗ってやろう。してその何倍もの剣は、いつまでに納品可能だ?」

「敢えてご質問を質問で返す無礼をお許しください。

逆にいつまでに、全てを取り揃えれば良いでしょうか? それにより、相手に嗅がせる鼻薬の量を……、いや失礼しました。神の教えを説く方法を変えて参りますゆえ……」

「はっはっは、崇高なる我らの教えを説くと言うのか。面白い事を言う男だな。

そうだな……、次に迎える年こそが我らの新しい幕開けとなろう。春までには全て整えよ。できるか?」

「はっ! 雑作もないことでございます」

「よろしい。今回の納品に対し、中身を見分の上で十分な対価を支払ってやる故、励むがよかろう。

神の使徒に必要とされている剣は、少なくともあと五倍……、いや、その倍でも構わぬが……、できるか?」

「はっ! もちろんです。猊下のご慈悲に感謝し、益々励ましていただきます」

恭しく目を閉じ、平伏したラウルは、心の中でだけ呟いていた。

『春までか……、では来年の夏、実りの収穫前が頃合いか? 言葉だけで見れば今の兵力に加え最低でも一万だが……、それだけではないな。

今少し調査すら必要があるだろうな』

ひとつの成果と新たな疑念を持ったラウルは、彼らの前を辞してハンドラーと共に退出した。

「旦那……」

ハンドラーは敢えてその先を言わなかった。

だが彼の言葉が意味する事を、ラウルことラファールは正確に理解していた。

「先ずは今の納品をきっちり納め、対価をいただいてからだな。これから忙しくなるってもんだ!」

そう言ってから頷いてみせた。

分かっている、そう言わんばかりに……

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

次回は『欺きあう者たち』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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