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I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~ – Chapter 467

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カイン王国の王都で思いもよらず『ひとかどの人物』と出会えたことに喜んでいた俺のところに、再び新たな来訪者が訪れた。

だが……、今度は先程と比べて少し事情が異なるようだ。

先ず第一に、取り次ぎに当たったカイン王国軍の指揮官は、先ほどアリシア殿下を紹介してきた時と比べると、面会者に対しあからさまに態度を変えていた。

「我々としてもこんな夜分に不躾な面会希望、『公王陛下に取り次ぐことさえ礼を失するもの』と一度は拒否したのですが……」

そう言って口元を歪めながら、俺には恐縮して話し始めた。

件の指揮官は、まるで俺に対し主君に対するがごとく振る舞い、来訪者については微塵の敬意もない様子で、彼らの情報や留意点などを事前に耳打ちしてくれていた。

「なるほど、そう言う話なら今夜中に会っておいた方が良いな。俺たちが王都を出発する前に『掃除』は済ませておくべきだし、判断は俺たちに任せてもらえるかな?」

俺の言葉に頷き深々と頭を下げた彼を見て、俺はこの『不躾な面会』を許可した。

ただ彼らに会う前に主要者を集めて協議し、彼らに対し予め四つの基本方針を定めた上で面会に臨むことにした。

ひとつ、基本的に団長が彼らの応対を行い、俺は様子見をしながら議論の行く末を見守ること。

ひとつ、俺自身が必要と判断するまでは、自身が何者かを名乗らないこと。

ひとつ、数を頼りに押し掛けた者たちに対し、対面する人数を制限して代表者のみ面会を許可すること。

ひとつ、彼らの態度思惑が事前情報通りか確認するため、様子見や揺さぶりを掛けた上で、途中までは思うように喋らせること。

これらの方針のもとで玉座を背に、アラル・ラファール・俺・団長・マルス・ダンケが壇上で一列になって横並びに座って相対するほか、取り次ぎに当たった歩兵部隊を率いるカイン王国兵の指揮官と、ゴルパ将軍から預けられたヴィレ王国兵の指揮官、そしてショーンがその後ろに立ち並び、それらに加えて広間には武装した警護兵たちが無言の威圧を加えていた。

「……」

招き入れられた彼らを団長は黙って見下ろしたが、彼らはそれに対し怯むことも、面会が叶ったことに感謝し、自ら礼を取ることも一切無かった。

本当なら団長の無言の圧って……、相当なものなんだけどね。

俺自身が二度目の人生で、降伏の申し出をする際に身を以て体験しているしさ。

彼らにはそれすら受け流すほどの胆力があるのか、それともハナから俺たちを軽く見ているのか……。

「面会を許可いただき、ありがとうございます。

我らは王都の商人を代表し『この国の未来のため』に必要な措置を取っていただくため、お願いに参りました」

ははは、我欲のため深夜に大勢で押し掛け来て『この国の未来のため』か?

しかも彼らの態度は『お願い』ではなく『要求』といった様子があからさまだな。

もっとも、彼らもそれを取り繕おうとする素振りもないみたいだ……。

俺は彼らの第一声だけで、既に気分が滅入りそうな感じがした。

「明日の出立を控えて我らも何かと忙しい。

こんな夜分にもかかわらず、たって願いとのことで今回は応じたが、我らに申し入れたい火急の用件とは如何なるものか?」

開口一番に多少の怒気を含めて団長が発した言葉の通り、そもそもが失礼な訪問である。

事前の約束もなく、招かれてもいる訳でもないのに深夜に面会を乞い多数で押し掛けること自体、通常なら相手の神経を疑うレベルの話しだ。

「今だからこそ、です。明日にも行われるという財貨の分配を直ちに取りやめていただいきたい。

そもそも奪還された財貨の多くは、王室と王都の主要商人から奪われたものですぞ」

なるほどね、このあたりは事前情報の通りだな。

未だ未発表の話だが、どこからか嗅ぎつけて血相を変えてやって来たということか?

「だが……、財貨を配分せねば明日の暮らしもままならぬ者もいるだろう? 規模の小さな商会も同様だ。

先ずは彼らを救うことこそ、王都を再建する道ではないのか?」

この団長の回答は俺たちの基本方針でもある。

旗頭となるアリシア殿下の元で行われる施策の第一弾であり、復興への大事なステップだ。

「そもそも分配される財貨は、侵略者が我らより奪っていたものです。ならば分配の前に先ず、我らに返還していただくのが筋でしょう!」

「奪われた財貨に対する所有権は我らに有ること、お忘れなきように。我らは三国での商いの要、我らの協力なしに王都の経済はたち行きませんぞ?」

「奪ったままで返さないとなれば、解放軍といえど奴らと同じ略奪者ではないですか!」

「未来に悪名を残されるよりは、ここで正しい決断をされた上で、私共の協力を得ることが得策と思いませんか?」

ははは、なかなか言いたい放題だな。

ただ四人の後ろに控えていた若い男だけは何も言わず、憮然とした表情で彼らの様子を眺めていた。

「我らとて奪われた財貨を放置するつもりはない。それらを精査し、先ずは民に当面の生活ができるように一時金を支払い、商人には補助金を支給して商いを支援するよう動いているが?」

この団長の言葉に一人の男が進み出た。

事前の情報によれば先程言葉を発した四人は、カイン王国の王都に拠点を置く大商人らしく、王国の経済を陰で牛耳り各国の王室にも影響力を行使していたらしい。

そのためか言葉尻にはあからさまに尊大な様子が滲み出ていた。

「ですがそれは一時のもの、まして我々の商いでは日々どれほどの金額が動くかご存じないのか?

明日の商いすら困っている我らに対し、路頭に迷えと仰っているようにしか聞こえませんぞ!

直ちに全額を返却いただきたい!」

「黙れ!」

団長は一喝して五人を睨みつけた。

その後に敢えて怒気を発しながら言葉を続けた。

「我らが知らぬとでも思ったのか? 全額とは何を指す?

聖教騎士団より奪還した財貨が全てではない。未だに侵略軍が多くの財貨を抱えて他方面に動いているが、まさかお前たちはそれを含め全て我らに返還せよとでも言っているのか?」

「「「「……」」」」

中々に図々しい奴らだな。

俺たちが何も知らず、ただの遣い走り程度にしか考えていないのか?

事前情報の通り、こちらが好意的でいる必要はなさそうだ。

そして、カイン王国では軍人の立場が低いこと、商人が王室すら操っていたという話も、もっともな話として頷けるな。

「いえ……、貴軍が今回奪い返され、配分を検討している財貨について、です」

「ほう? 先程は全額と言っていたが、それは訂正するのだな?」

「そ、そう言う意味ではありません。今回奪還された財貨の多くは元より我らの財貨、せめてそれらは全額返還いただきたく思います」

確かにな。これまでの調査で分かったこととして……。

・聖教騎士団は主に王都の貴族や大商人など、豊かな者たちを中心に財貨を奪っていた

・逆に正統教国の兵士たちは主に小規模商人や商店、王都に住まう一般の人々から財貨を奪っていた

なので俺たちが奪還した財貨の多くは、王室や貴族、そして大商人たちから奪われたものだ。

そういう意味では彼らの言葉は正しいが、奴らは俺たちが奪還した財貨の情報をどこから嗅ぎつけたんだ?

官僚の中にも奴らの歓心を買おうとする者、結託して不正を働いていた者がいると言うことか?

「だがそれでは、明日の暮しさえ困っている多くの民が路頭に迷うことにならないか?」

そう、だから俺たちが精査し公平に分配すると決めたんだ。

まぁ他にも大きな理由があるけどね。

「もちろんです。我らも王都に住まう民の暮らしを支えるため、返還された財貨を元に対価を与えて仕事を、必要な者には貸付けを行う予定です」

ちっ、奴らめ。この機会を利用して商売に精を出す気か?

しかも救済なんて考えておらず、搾取と貸し付けによって支配を強化するだけだろうな。

「ほう? お前たちは国に代わって民を救済すると言うのか?」

「我ら四名は三国を代表する商人であり、カイン王国を支える立場でもあります。言わば『王国とは一心同体』、この国の未来を担う『責務』もございますので……」

いけしゃあしゃあと言うにも程があるな。

王国の未来を潰し、つい先程までは王都を占領した敵にすら尻尾振っていた奴らの言葉とは思えないな。

思わず団長も苦笑していたし。

だけどそれは呆れているだけで、奴らは既に龍の尾を踏んでいる。

「この国の境遇には同情を禁じ得ないし、なんらかの手を差し伸べたい。これは我らに共通する認識だ。

だが……、奪い返したものには王室の財貨も含まれている。それらはこの国の未来のため、然るべき方に託さねばならんものだ」

団長と商人との言葉の応酬が続くなか、先ほどまで憮然とした表情で無言を貫いていた男が口元を歪めた。

もしかしてこの言葉を待っていたのか? そうであれば中々あざとい遣り口だな。

俺はこの男が誰であるか事前に聞かされていたからこそ、そう思うに至ることができた。

「ハハハ、この者の言葉も道理である。ならばこそ自ら吐いた言葉を今、其方らは履行すべきであろう」

そう言うと四人の商人たちは左右に移動して道を開け、あからさまな様子で五人目の男に敬意を示す姿勢を取った。

「私からは先ず其方らに命ずる。言葉通り然るべき者に奪還した全ての財貨を託すように、と。

まずは後ろの玉座への道を開けよ。そこに座るべき者は既に一人しかおらん」

ってかさ……、こいつは阿呆なのか?

正統教国の軍が居たときは何もせず逃げ隠れていただけの奴が、この期に及んで権威を主張するのか?

それに加え周りの太鼓持ちである商人たちも、言葉は繕っているものの俺たちを舐め切っているよな?

やはり聞いていた通り、この国では商人が大きな力を持ち、王室ですら顔色を窺い、軍人たちは飼い犬のように扱われているということか?

そのような体制は新たな王のもとに統一される国には弊害でしかないな。

この際だから少しだけ煽ってみるか?

「我らが主以外に、この玉座に座るに相応しい者がいるとでも?」

ここで俺は敢えて会話に参加してみた。

きっと奴らから見れば団長が派遣軍の司令官、俺はその配下の一人程度としか見ていないのだろう。

「当たり前だ小僧! 貴様は玉座の重みを分かっているのか? 尊き血統を持つ至尊の者だけが座ることを許されたもの、それが玉座だ」

「仮にそうだとして、カイン王国の玉座を占めるに値する方が居らっしゃるということですか?

そうは思えませんけどね」

「なかなか無礼な奴だな。本来なら今の言葉だけで万死に値するものだぞ。発言は奴らを討った功と相殺し一度目は許してやるが二度目はないぞ。

今後は『相手を見て』口の利き方に気を付けよ!」

おいおい、その上から目線は何だ!

それにさ、別に許して貰わなくても俺は一向に構わないぞ。

折角だし、もうちょっと煽ってみようか?

「はて……、俺はこの国の流儀は知りませんが、国王と王族は侵略者に討たれ過去の因習は消えました。

百歩譲って過去の栄光を取り戻したければ、先ずは解放軍たる我らに情けを乞うことが筋と思いますが?」

「ば、番犬風情が何を言うか!」

「なかなか面白い表現ですね。我らが王都を奪還しなければ明日をも知れない身だったというのに。

それとも、この国では命の恩人にすら頭を下げないことが道理として罷り通るとでも仰っているのですかな?」

俺は玉座の間に奴らが入って来てから、ずっと様子を見ていた。

だが、誰の口からも感謝の言葉は出ていない。

もちろん、そんな言葉を期待していた訳でもないけどね。

「度し難い奴め、小物風情が大口を叩きおって。

お前たちはただ出て行った奴らの背を討っただけではないか? 王都の奪還など誰にでもできるようなことを武勲として誇るでないわ」

ははは、なかなか面白いことを言うな。

思わず吹き出しそうになったじゃないか。

「それを聞いて安心しました。俺たちは明日になれば全軍を率いて王都を出ますが、『誰にでも奪還できる』ような王都であれば後顧の憂いもありませんね。後はご自身で強敵と戦われるが良いでしょう」

「ど……、どう言うことだ?」

なんだ? 大言壮語した割に一瞬で青ざめた表情になっているじゃないか。

まさか俺たちを番犬として、そのまま守りに就かせるつもりでいたのか?

「ここで暴威を振るった聖教騎士団六千騎が未だ周辺を跋扈しております。加えて出て行った約一万三千の敵兵も、財貨が奪還されたと知れば戻って来ることでしょうね」

まぁ半分は嘘だけどね。

聖教騎士団は彼らの知らぬところで全滅しているし。

「……」

あれ? この程度のブラフにだんまりですか?

さっきの勢いはどこに行ったんだよ?

更に追い込んでみるか。

「俺たちは貴国の番犬ではない。出て行くことも自由だし、その後に王都がどうなっても知ったことではない」

「ま、待て! 貴様にそんな権限がある訳がなかろうが!」

「元よりカイン王国の行く末など我らは預かり知らぬこと。まして、王都を奪還して差し上げたのに礼すら言わず、ただ金をせびりに来る輩などと縁が切れれば、この先も安心というものです」

「ぶっ、無礼者が! それが一国の王に対する態度か!」

俺も意地が悪いのは重々承知しているけど、このブーメラン王子、なんか面白いな。

団長とラファールなんか、神妙な顔してるけど実のところ必死に笑いを押し堪えているし。

「これは異なことを、カイン王は全ての王族を引き連れて王都から逃亡を図り、運悪く捕縛されて王族共々全員が処刑されたと……、真に痛ましいことです」

「そうだ! それ故に唯一生き残った王位継承者がこの私だ。これにて茶番は終わった。玉座への道を開け、そこに座るべき者として私に財貨を返還せよ。私は王として貴様らに王都防衛の任を与えてやる」

そうだね、そろそろ此方も茶番は終わらせようかな。

一応事前に聞いた話を確認するため色々と弄ってみたけど、前評判通りの男でしかないな。

「では改めて確認するが、カイン王国の王としてその責務を継承し、正式に我らが主に対し王都の防衛を懇願するということか?」

「それは違うな、貴様らにカイン王国の国王として命じておるのだ!」

いやはや……、もう無茶苦茶な話だな。

そもそもだが、仮に国王であっても俺たちに命じる権利などない。

おそらく奴は俺たちのことを、先に滅びたヴィレ王国の残党とでも思っているのだろう。

実際に王都を奪還した兵の半数はヴィレ王国兵だしね。

「我が国はヴィレ王国にも何かと貸しがあるからな、これよりお前たちは我が命に従い命を捧げよ!」

この言葉には流石に俺もカチンと来た。

これまでの戦い、俺の我儘から始まった遠征だけど無視できる犠牲とは言いつつも、率いた軍の中からも犠牲は出ている。こんな奴を王位に就けるため、彼らが死んでいったのではない。

「ではもう一度確認するぞ、貴様はカイン王国の新王として即位し、その責務(罪)を継承するのだな?」

「もちろんだ! それが王族としての務めよ。責務(権限と財貨)を継承するためにわざわざ出向いて来てやったのだ。故に命ずる」

「何だ? 言わせてやるぞ?」

「私を国王としての礼遇を以て迎え、この無礼者を直ちに捕縛して獄に繋げ!

私は先ほど『一度目は許すが二度目はない』と申したはずだ!」

この言葉を受けて団長は俺に向かって頷いた。

団長の怒りもそろそろ限界に達していたようだな?

「直ちに『この者』の無礼を糺し、縛につけて牢に放り込め!」

団長の言葉を聞いて一瞬だけ歓喜に満ちた表情をした男は、次の瞬間に『この者』が誰を指してのものかを身を以て知ることになった。

兵たちは一斉に男に向かって走り寄ると、彼を押さえつけて無理やり床に跪かせた。

「な、何をするか! 一国の王に対し何たる無礼かっ!」

突然起きた訳の分からぬ事態に対し身を捩って抵抗する男は、それでも押さえつけられながら声を荒げて非難の言葉を吐き続けていた。

「カイン王国の王位を継承したと自称する者よ。其方にはグリフォニア帝国領を侵略した罪を国王として背負い、後日になって沙汰ある戦争犯罪人として刑に服すことになる。自ら名乗り出たことは殊勝であるが、帝国の代理人として放置できんからな」

「なっ、なぁぁぁっ!」

俺の言葉に驚愕したのか、男はカン高い絶叫を上げて崩れ落ちた。

同様に彼を担ぎ上げた商人たちも震え始めた。

「良かったな。本来であれば王位継承者としての序列は第十三位、そんな貴様が望んだ通り王位を継ぎ『国王として罪を償う』責務を果たし、それによって臣民を救うことができるんだ。

これで満足だろう」

俺からその言葉を聞いた奴は一瞬だけ驚いたあと、再び怒気を込めた目で俺を睨みつけた。

そう、俺たちは事前に聞かされていたからね。

そもそも奴は亡くなった国王の妹の息子、そのため王位継承順位は低く素行の悪さから王族としても扱われていなかったこと。

大商人たちと結託して暗躍し、散々王国に害を為していたことを。

評判が悪かったこともあって、王族がこぞって逃亡を図った際も置き捨てられ、そのお陰で命を拾ったような輩であることを……。

「貴様風情が言うことではないわっ! ふん、解放軍が聞いて呆れるわ。結局は貴様らも帝国の威を借りて財貨を漁るだけの輩ではないかっ!」

「黙れ下郎っ! そもそも此方の方は帝国次期皇帝の盟友であり、不当な侵略を行ったカイン・ヴィレ・リュートの三国に対する懲罰を託された、れっきとした一国の王たる方ぞ!」

「!!!」

「そもそも貴様のような『にわか』が対等に話せるお方でもないわっ、この痴れ者が!」

ははは、団長も辛辣だな。

『にわか』とは言いえて妙な表現だけどさ。

「そ……、そんな話は聞いておらんぞっ! 王などと……、わ、私は絶対に認めんぞ」

うん、俺も君に認めてもらおうとは思ってないからさ。

別にそう思ってもらって構わないよ。

「侵略にあえぐ三国の民を救いたい、そんな主の慈悲により我らは三国を解放しているが、救うのは民であって王家ではない。分を弁えよ!」

まぁ実際に帝国に突き出すかは別として、三か国を統合する上でこういった輩は排除する必要もある。

王位継承順位で言えば格上、第五位のアリシア殿下がカイン王国をまとめ、クラージユ王が動きやすいようにする政略の一環でもあるしね。

「あ、貴方たちはこの国を……、どうされるおつもりですかっ!」

「我らも解放されるべき民にございます。我らにも支援があって当然でしょう」

「国土を解放されるおつもりなら、我らの財貨も直ちに返還いただきたい!」

「我らの協力は今後の統治に欠かせませんぞ!」

これまで途中から観客となり、新王の後ろ盾になって利を貪るつもりだった商人たちが慌てて声を上げ始めた。

だけど彼らについても事前に話は聞いていた。財貨を彼らに返還するに値しない理由も含めて……。

なので俺は冷淡に応じるだけだった。

「お前たちにも最低限の商いに必要な財貨は補助金として与えるか、貸し付けてやるさ。

ただ一部の大商人たちは侵略軍に進んで財貨を差し出し、自身の身の安泰を図ったことも聞いている。

俺はそれを責め罪に問う気はないが、奪われたのではなく献上した物は返って来なくて当然だろう?」

「そんな……」

「それは余りにも……」

「横暴ではありませんか?」

「我らとて生き残るためにしたことです!」

「それに先ほどお前たちは『王家とは一心同体』と言っていたではないか?」

そう、悪辣な奴らは最初から俺たちの言葉から『言質』を取る気でいた。

だが、『言質』を取ろうとしていたのは奴らだけではない。

「お前たちの言った言葉に従えば、『一心同体』であるはずの王家を裏切って侵略者の歓心を買ったことにならないのか?

それには目を瞑ったとしてもカイン王国が帝国を侵略した罪、これから逃れることはできない。

一心同体ゆえに、罪を背負ってもらう必要があるだろうな」

「「「「……」」」」

「俺たちは奪還した財貨を自身の懐にしまうことはない。慎重に精査を進めた上で一部は返還し、残った全てを新たな国の未来のため、然るべき統治者に託し国土の再建に使ってもらう」

正直言って奴らに返してもろくなことにはならないだろう。

これまで以上に大商人の搾取が進むだけだと思っているし、商人が牛耳るこの国の在り方も問題だと考えていたからね。

「今のお前たちはこの国の人々の未来を憂うこともなく、ただ我欲に走っているだけだ。俺達にはそんな者からの歓心も不要だし、新たな国の統治には邪魔な存在でしかない」

「そ、そんな……」

「それは余りにも……」

「悪辣ではありませんか?」

「我らと敵対なさるのか!」

悪辣なのはどっちだよ!

そもそも敵対するような対応をして来たのは、お前たち自身じゃねぇか!

そんな言葉が出そうになったが、なんとか飲み込んだ。

「我らとしても、ただ咎人をこれ以上増やすことは本意ではない。お前たちがここで引けば、これまで『何をしてきたか』を問うつもりはない。

ただし! これから『何をするか』は厳格に見るつもりだけどな」

毅然たる態度で告げると、彼らは一様に項垂れていた。

この後の匙加減や情状酌量はアリシア殿下やクラージユ新王に任せればいいことだ。

そして……、王位継承者序列第十三位の男は玉座の間から連れ出された。

牢に繋ぐとは言ったが、俺も団長もそこまでするつもりはない。

ただ軟禁して、この男の対処もアリシア殿下に任せるつもりだ。

翌日、俺たちが出発した後にはなってしまうが、暫定的にカイン王国を統べる立場として、アリシア殿下が民衆の前に出ることは既に決定事項だしね。

不快な面会は終わった。

だが……、このまま終わるとも思えない。

カイル王国の復権派もそうだったが、こう言う輩の張った根は深いからね。

特に商人たちは何か画策してくる可能性もある。

「ショーン、俺たちは明日の早朝に立つが、このまま治ると思うか?」

「いえ……、今や彼らも必死です。

何らかの妨害工作をしてくるものかと思われます」

「だよね、なのでショーンには『保険』を預けておくよ。運用は任せるし、当面の統治に当たってはアリシア殿下と相談して対応してほしい。

全ては俺の責任のもと、暫定ではあるけどショーンには統治の全権を預かるからさ」

「はっ! 公王陛下の名を汚さぬよう、我が命に懸けて取り組ませていただきます!」

「いや……、そこまで気負わなくて良いからね」

少し不安な残る後味の悪い結末とはなったが、新しい体制の地ならしができたと思えばいいだろう。

まだ油断はできないけどね。

その体制を構築するためにも、前提条件として俺たちがイストリア正統教国軍を三国から完全に排除しなければならない。

こうして幕間喜劇の第二幕は幕を閉じた。

俺たちを含め第三者から見れば喜劇、当事者たちにとっては悲劇という形で……。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

次回は11/04『隘路攻撃』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

I Thought It Was My Second Life, But It Was Actually My Third!~I Will Challenge Unhappy History with Historical Knowledge and Domestic Efforts~

2-Dome no jinsei, to omottara, jitsuwa 3-domedatta.~ Rekishi chishiki to naisei doryoku de fukōna rekishi no kaihen ni idomimasu ~, My Second Life... or So I Thought, but It's Actually My Third Life: Using My Knowledge of History and Domestic Policies to Change the Unfortunate History, 2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Released: 2022 Native Language: Japanese
Born the second son of a baronial family plagued by misfortune, Takuhir became the head of the household at the age of 16 after successively losing his family to calamities. Desperately working on domestic affairs, but being an ordinary man, he was unable to prevent the continuing disasters or restore his domain. He was called incompetent and defeated by a neighboring country’s invasion at the age of 20. Pleading for the protection of his people in exchange for his own life, he awakened to magical skills at the moment of his execution and transferred himself to the past to redo everything. Returning to the time of his birth as the second son of the baronial family, he also regained the sad memories of his first life, living and dying as a Japanese person. Utilizing the historical knowledge gained in his second life in another world and the knowledge of modern Japan from his first life, he resolves to avoid disaster and save his family and companions in his third life. However, being still a child, he cannot achieve overwhelming power or sudden reversals. He starts with steady proposals for domestic reform, earns funds, increases his allies, develops the town, and gradually accumulates power. Can he change history and save his family? Is there a bright future in this world of redoing? The grand rebellion of an ordinary man, who has resolved to fight against a history that brings one disaster after another, now begins.

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