翌朝、『ウロボロス』の『統合指揮所』には、惑星ドーントレス救援隊隊員が勢ぞろいしていた。
青奥寺、双党、新良、レア、雨乃嬢、絢斗、三留間さん、そしてルカラスだ。
しかし青奥寺家に関しては許可は出ると思っていたが、三留間家であっさり許可が出たのは俺としては驚きだった。もちろん俺が直接行って話をしたのだが、両親ともに「先生にお任せします」の一言で、なぜそれほど信頼されているのか理由がわからないままだった。
そもそも三留間家のご両親は、青奥寺家とは違って一般の方々なのだ。それが娘さんを異世界に連れていったり宇宙に連れていったりなんて普通は信じられないと思うのだが、三留間さんのご両親は妙に理解が早い。三留間さん曰く、
「私の力のことで色々とありましたし、明蘭学園に入る時も、校長先生と色々お話をしていて、そういったことには理解があるんです」
とのことだったが、それにしては俺のことを信用し過ぎな気もしなくはない。
ともかく全員揃ったので、まずは『ウロボちゃん』に発進を指示する。
『では本艦はこれより惑星ドーントレスに出発しまっす。約2時間の航行となりますので、ごゆっくりおくつろぎください~』
どうやら前回より『ラムダ航行』の速度は速くなってはいないようだ。
正面モニターに『ラムダジャンプ開始』の文字が表示され、『ウロボロス』が航行を開始したことがわかる。
俺はそれを確認すると、救援隊メンバーに向き直った。
「よし、じゃあまずこれからのことだが、正直向こうがどうなっているのかもほとんどわかっていない。ただ惑星全体でモンスターが大量発生しているようなので、それらの内、特にマズい場所に俺たちは行くことになると思う」
「主にモンスターを掃討する役割を担うということですね」
青奥寺の質問に俺はうなずく。
「そうなると思う。ただ、結局オーバーフローをなんとかしなくちゃならないから、いくつかのダンジョンに入ってボスを倒すまでをやらないとならないだろう」
「ダンジョンの数もわかっていないんですね?」
「その辺も全部わからない。『ウロボロス』に調べさせればすぐに判明するだろうが、下手をすると数百数千ということも……」
「ええ~!? 面倒臭いです~!」
と叫ぶのは双党。俺はその額をコツンと叩く。
「……あるかもしれないが、前に惑星に下りた時にはそこまであるという感じではなかった。多分いくつかの高レベルダンジョンが手に負えなくてオーバーフローした感じだろうな」
「もう、脅かさないでくださいよぅ。でもそれならちゃちゃっと終わりそうな感じですねっ」
「ところが、なんかデカい穴が開いていたりもするんだそうだ。これは勇者的に非常に嫌な予感がする」
俺が真面目な顔になると、というかこれは実際真面目な話なのだが、双党はしかめっ面をして引くような仕草をした。
「うわぁ……。先生が言うと冗談にならなそう」
「冗談じゃないからな。それでもまあなんとかなるだろ。色々準備もしてあるからな」
「やっているのは主に『ウロボちゃん』ですけどね~。あとイグナさん?」
「まあな」
先日『ウロボちゃん』とイグナ嬢には、異世界で手に入れた『魔導砲』なども渡して、すぐ量産するように言ってあったりする。『魔導銃』も強力なものがすでに開発されており、例えば上級光属性魔法『ジャッジメントレイ』を撃てる『五八式魔導銃』に、背負い式の『増設魔力槽』を接続して500発くらい撃てるようにしたりと、危険な超兵器が続々生産されている。
もちろん勇者艦隊の艦艇にはすべて『魔力ドライバ機関』による兵器が搭載されていて、艦砲射撃による攻撃も可能である。
「そこまで聞くとボクたちの活躍する場があるのか心配になるね」
という絢斗の言葉もわからなくはないのだが、すかさすミリタリーマニア双党が、
「でも地上戦って絶対最後は歩兵が必要になるからね~。どんなに強力な兵器があってもそれだけは変わらないんだよ」
とフォローをしていた。まあそもそも宇宙戦艦はダンジョンに入れないしな。
一通り説明をして、それから各自準備を兼ねた自由時間とした。
青奥寺や絢斗、雨乃嬢は刀一本でなんとでもなる娘さんたちだが、さすがに今回は俺も考えていくつか防御アイテムを渡した。防具は嫌がる娘さんたちなので、首輪や腕輪などのアクセサリ類を『空間魔法』の奥から引っ張り出して身に着けさせた。
ニヤニヤしながら『硬身の指輪』を左手の薬指につけようした雨乃嬢が青奥寺に制裁されていたりもしたが、やっぱり小学生的なムーブが若い女性の間で流行りなんだろうか。
双党とレアには、通常の『ライトアロー』を撃てる魔導銃に『ジャッジメントレイ』を撃てる『五八式魔導銃』をドッキングし、さらに背負い式『増設魔力槽』を増設するというスペシャル武器を支給した。
「こんなスーパーウェポンを使わせてもらえるのは感動でぇすね! ドラゴンでも撃ち落とせそうな気がしまぁす」
「まあ実際落とせるしなそれ」
「本当でぇすか!? 使う時がとても楽しみでぇす!」
双党も一緒にはしゃいでるし、もはや戦いに行く前の雰囲気ではない。
なおその横でジト目になっている新良がいるが、こちらはアームドスーツが異世界仕様になっていて、しかもさらに改良が加えられているらしい。
「それから三留間さんにはこれね。魔法の杖とローブ」
「は、はい、ありがとうございます。これはどういうものなのでしょうか?」
今回唯一の非戦闘員である三留間さんだが、彼女は治療担当であるので『聖霊の杖』と『聖霊のローブ』という希少装備を渡しておく。名前から何となく察せられるが、魔力とか回復魔法とかの能力を高める高レベルな装備品で、実は勇者パーティの大僧正のお下がりである。
ちなみに銀色の杖と白いローブは、じいさんだった大僧正より三留間さんの方が圧倒的に似合う。三留間さんがローブを羽織って杖を手にすると、見た目は完全に『聖女』である。能力的にも性格的にも完全に『聖女』なので見掛け倒しでもないのだが。
「それほどすごいものなのですね。確かにこの杖は、持っているだけで魔力が増えるような気がします」
「かなり強力な魔法の杖だからね。普段使いするようなものじゃないけど、今回は必要になるかもしれないから」
あまりいい予想ではないが、モンスターが都市部で暴れているなら相当数の犠牲者が出てしまっているだろう。三留間さんの出番はきっと多いはずだ。
さて、装備の確認をして、あとはそれぞれ適当に過ごしてもらっていると、モニターに惑星ドーントレスの排他的宙域に進入の表示が現れた。
『あと10分でラムダジャンプアウトしまっす。皆さん準備をお願いしますね~』
という艦内放送が入り、全員が『統合指揮所』に集まってくる。
『ジャンプアウト10秒前。……5、4、3、2、1、ジャンプアウト』
正面大型モニターの表示が切り替わり、遠くに白い衛星を伴った青い星が映し出される。
まだ見えないが、周囲には宇宙船や宇宙港なども多数浮いているはずだ。
『艦長、銀河連邦軍所属艦隊からの通信でっす』
「つないでくれ」
俺が指示すると、大型モニターの横に通信相手の姿が映し出される。それは人の姿をした、白い靄にしか見えない人物であった。
『お久しぶり、というにはあまりに早い再会となってしまいましたね、ミスターアイバ』
銀河連邦評議会の議長、メンタードレーダ氏は、そう言って頭部のあたりの靄をゆらゆらと揺らして笑いを表現した。