―― クリムゾントワイライト 日本支部 支部長室
「あの『魔導廃棄物』が倒されただと? 本気で言っているのかカーミラ」
「本気も本気、この目で見たんだから間違いないわよぉ。ワタシでも手こずりそうな奴が現れたんだけど、結構簡単にやられちゃったわぁ」
「あの感じだと最低でも『特Ⅰ型』が現れたはずだ。それをあっさりと倒すなど、この世界の人間に可能とも思えんが」
「そうねぇ、『この世界』の人間なら、ねぇ」
「どういう意味だ? やはり我々の世界から来た人間だと言うのか?」
「その可能性も残しておいたほうがいいって話よぉ。どちらにしてもワタシはあの男を監視対象にすることにしたから。悪いけど手出しをするなら手伝うことはできないわぁ」
「ふん、まさかあれがお前たちの探している勇者とやらだと言うのではないだろうな。まったく、そのような世迷言で世界が正せるなら誰も苦労などせん」
「世界を正すなんて、そこまでは考えてないけどねぇ。もしかしてクゼーロ、アナタこそそんなこと考えてるんじゃないのぉ?」
「ふ……っ。我々の世界もこちらの世界も、どちらも内情は酷いものだ。深く関われば関わるほど行き詰っているのがわかる。つまらぬ題目に惑わされ、すべてを救うふりをしながら大切なものを取りこぼす。愚かとしかいいようのない世界なのだよ」
「あらぁ、そんな言葉を聞くのは初めてねぇ。意外と情熱的なんじゃない」
「情熱などあるものか。あるのは冷めた怒りのみ。しかし我らの悲願達成にはまだ時間がかかりそうだ。お前たちがあの相羽を使って目的を達しようというのならそれはそれで構わんが、我々の邪魔はするな」
「それはもちろんよ。お互いを尊重し合うのは今まで通りにお願いしたいわぁ」
「ふん。お前たちがあちらの世界を掃除してくれるなら、それはそれでこちらもやり易くはある。その後は袂を分かつことになるかも知れんがな」
「そうねぇ。でももし彼が本物なら……うふふ、誰も勝てないと思うけどねぇ」