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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop! – Chapter 153

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とうとうこの日が来た。

力強く前を見据えた勇者たち。頬を撫でる張りつめた空気に、自ずと背筋が伸びる。

「チャンスは一回です」

ロンドが重々しく口を開いた。それほど大きな声ではないが、静まり返った広場でロンドを注視する勇者たちの耳には十分に届いている。

「フランメ火山を越えた先は正真正銘人類未踏の地。なにが起こるか分かりません。絶望的な戦いになるかもしれない。それでもあなた達なら――魔族討伐をも果たしたフェーゲフォイアーの勇者たちなら、きっと姫を救い出すことができる。僕はそう信じています」

準備は十分に整えた。魔族との取引という無茶も押し通した。あとはもう、彼らに託す他ない。

ロンドが半ば祈るように言う。

「どうか姫を救ってください」

純粋に姫を救おうとする者、人類未踏の地に思いを馳せる者、武勲を上げ身を立てようとする者、姫との逆玉を狙う者――

十人十色の思いを胸に、ただ一つの目標に向けて勇者たちが街を発つ。

ここまで来れば、もう俺たちは祈るしかない。

姫の救出は勇者たちに託された。

*****

俺たちはできうる限り最大の努力をした。

しかしいつだって努力が報われるとは限らない。分かっていたはずなのに。

文字通りの血の雨を降らせながら転送されてきた勇者の死体。立ち込める敗北の匂い。

積み重なり山になっていく死体を、俺は呆然と眺めることしかできない。

「荒れ地の魔族が約束を反故にしたんでしょうか」

ロンドが青ざめた顔で唇を震わせる。

凄まじい勢いで勇者が転送されてくるものだから、リンが俺たちを裏切って奇襲をかけたのだと思ったのだろう。

しかしそれはない。死体を見れば分かる。荒れ地の魔物共の仕業なら主な死因は焼死のはず。しかしこれは。これは……なんだ?

死体の損傷に一貫性がない。運悪く魔物の群れにでもエンカウントしたのか? しかしこの人数をこの短時間で屠るほどの群れなど――いや、俺が推理したって仕方がないな。

死人に口なし。しかし勇者は幸いにも蘇生ができる。俺は比較的損傷の少ない勇者を選んで蘇生していった。

「じ、地獄だった」

蘇生させるたびに俺はこのセリフを聞かされる羽目になった。

蘇生を済ませた勇者たちが教会の隅で固まって震えている。

「あんなすぐそばに……山をたった一つ越えた向こうに本物の地獄があったんだ。あんなところで普通の女の子が生きていられるはずない」

「どういうことですか? なにがあったんですか? ねぇ!」

ロンドの問いかけに、勇者共は肩を震わせるばかりでまともな受け答えができない。やっぱ雑魚共じゃ話にならないな。

俺は死体の山の中からアイギスを引っ張り出し、蘇生させた。

「火山越えまでは順調だったのですが、問題はそこから先でした」

促すと、アイギスはポツリポツリと語り始めた。しかしアイギスをもってしても、その顔色は芳しくない。

「魔物の強さや多さはもちろんですが……魔族が」

「魔族? 火山の向こうに魔族がいたんですか?」

「……恐らく一体や二体ではありません。あそこは文字通り人間の領域ではない」

俺たちは言葉を失った。

たった一体の魔族にだって歯が立たないのに、それが何体も?

「でも現に姉様はっ……マフラーは生きてるって」

ロンドが声を震わせながら縋りつく。

しかしアイギスはロンドから顔をそむけるようにして俯いた。

「……ヤツらにとって我々人間は珍獣のようなものなのかもしれません。興味深そうに勇者を弄り回している魔物もいました。マフラーと共に姫が生かされている可能性は否定しませんが……まともな状態かどうかは……」

「そ……んな……」

「あの」

ロンドが血溜まりの中に膝をつく。なんと声をかけて良いのか、俺には分からなかった。どんな言葉も慰めもロンドの心を蝕む絶望の前ではなんとも安っぽく思えた。

「すみません」

物言わぬ死体と黙り込む生者ばかり詰め込まれた教会に重苦しい空気が張りつめている。血の匂いのこびり付いた冷たい空気が呼吸のたび肺を侵し胸を重くする。

「えっと、あのう」

……誰だこんな時に。呑気な声上げやがって。空気よめねぇのか? ずっと無視してたがそろそろ限界だ。俺は緩慢な動きで顔を上げる。

あれ?

手の甲で目を擦る。しかし手が血塗れだったものだから、視界が真っ赤に染まることになった。テンパりすぎだろ。神官服で目元を拭い、改めて目を凝らす。

……なんか、姫いるんだけど……

ロンドが血塗れのカーペットにぶっ倒れた。目を回して言う。

「ユリウス神官、僕はもうダメみたいです。姉様の幻覚が」

「いや……幻覚じゃないみたいです……」

*****

救出作戦は普通に失敗したが、姫は普通に自力で帰って来た。

意味が分からない。俺たちの今までの努力はなんだったんだ。姫の為に装備整えたり、訓練に励んだり、ボンクラ貴族に壺売りつけたり、魔族のデートに付き添ったり、墓守バイトやった帰りにヤバい錬金術の材料にされそうになった挙句ふわふわぬいぐるみのお食事シーン見せられたり、幼女化施術を受けたクズ共の世話をしたりしたのに……あれ? なんか思い返すとあんまり姫関係ないな。

っていうか勇者共の言う“地獄”からどうやって帰ってきたんだよ。

尋ねると、姫と共に帰還したセシリア先生があっさり言った。

「キメラの羽根です」

「あ……そうですか……」

キメラの羽根は瞬間移動アイテムだ。使用直前に訪れた街に一瞬で行くことができるらしい。とはいえ激レアアイテムの上に一枚の羽根で移動できる人数や荷物には制限がある。通常の移動で使われることはまずないが、最前線の街に向かった姫君がいざという時のお守り代わりに持っていたとしてもなんら不思議ではない。

「……それ、もう少し早く使うことはできなかったんですか」

俺は教会の隅に集められて雑に布で覆われた死体の山どもを横目で見る。

姫はこの血生臭さに耐え切れずロンドと一緒にすぐ教会を出たが、セシリア先生はあまり気にならないようだ。微笑みを携え、いつもの柔らかな口調で言う。

「連れ去られた場所が地下だったので使えなかったのですよ。隙を見て外へ出て、ようやく今日逃げ出せたんです」

「地下だと使えないんですか?」

「ええ。地下というか、屋内だと使えません。頭をぶつけるので」

頭をぶつける……?

俺のような庶民はキメラの羽根なんて貴重な品使った事どころか見た事もないし使用方法もろくに知らない。セシリア先生がなにを言っているのかは良く分からないが、まぁ便利なシロモノには使う時それなりの制約があるものなのだろう。

しかし怪我一つないな。身なりも綺麗なままだ。表情も明るい。今はロンドに領主の館へ連れていかれたが、姫も同じような感じだった。

俺はそうとは知られないよう注意しながらセシリア先生の観察を続ける。

「魔物たちに酷い事はされませんでしたか? 火山の向こうには魔族が多くいたという話でしたが……一体何があったんですか」

「それが、私たちにもよく分からないのです。連れ去られたときに気を失って、姫と共に客室のような部屋で目を覚ましました。それからずっとそこに監禁されていたので、詳しい事は何も。でもそれほどひどい扱いではありませんでした。与えられた客室は古かったですがよく手入れされていましたし、食事もきちんと与えられました。なのでてっきり私たちは人質として攫われて、外でなんらかの交渉がされているものと思っていたんですが」

その線はもちろん俺たちも考えた。

しかしフェーゲフォイアーにも、もちろん王都にも今現在まで魔物共からの要求は届いていない。

「魔物たちからの接触はなかったんですか?」

「接触……あぁ、そういえば。アリア姫が色々と聞かれていましたね。扉越しだったので相手の姿は確認できませんでしたが、たまにフラッとやってきては姫との会話を要求してきました」

じ、尋問か?

やはり王族のみが知る秘密とかそういうのを喋らせるために姫を?

俺は生唾を飲み込む。

「なにを聞かれたんですか」

セシリア先生は首を捻り、一瞬の間をおいて答えた。

「趣味、家族構成、好きな食べ物、ええとそれから……休日なにをやってるかとか」

お見合いかな?

俺はセシリア先生の観察を続ける。ふわふわした捉えどころのない雰囲気、喋り方。完全にセシリア先生だ。

しかし……本当にそうだろうか。

俺は密かに訝しんでいた。なにせ魔物に攫われ、ついさっきまで人類未踏の地に二人はいたのだ。それがこんなに簡単に、怪我一つなく帰って来た。奇跡の一言で片づけて良いものか。

……魔物共の狙いが姫やセシリア先生本人ではなく、彼女たちに化けて王都の中枢に入り込むことだとしたら?

一見するとセシリア先生以外の何者にも見えないが、シェイプシフターの件もある。見た目だけならヤツらは人を完全にコピーできるのだ。

中身まではコピーできまいとこうやって会話を試みているが、今のところ違和感はない。とはいえ、セシリア先生と俺は教師と生徒だ。親しい友人というわけではない。魔物が巧妙に偽装していたら、俺は果たしてそれに気付けるだろうか。元々掴みどころないし。

……確かルッツもロンドと一緒に姫のところにいるはず。俺だけの判断じゃ不安だ。ルッツも呼んでみようか。とはいえ、アイツも条件は俺と同じだしなぁ。

ルッツを呼ぶべきか悩んでいると、勢いよく扉が開いて白い服の男が飛び込んできた。ちょうど良いタイミングでルッツが来た……かと思ったが違う。纏っているのは神官服じゃなく白衣だ。少し遅れて、ウサギ頭の女も入ってくる。

「救出作戦失敗したんだって?」

満面の笑みで最低なことを楽しそうに言いながらマッドがこちらへ駆け寄る。しかし振り向いたセシリア先生の顔を見るや、石化したように足を止めて溶けるように笑みが消えた。

「セシリア先生……」

マッドが苦虫を噛み潰したような顔でそう呟く。

セシリア先生の目が見開かれる。一瞬の間を置いて、弾かれたように立ち上がった。

「ああ……ああ! 本当に、本当に貴方なのですか。フラメル……いいえ、フラメル元神官」

フラメル――シャルルもマッドの事をそう呼んでいた。アイツの元々の名前なのだろう。

セシリア先生は動揺を隠せないようだ。口元に手を当て、大きく見開かれた瞳が揺れる。瞬きするたび大粒の涙が頬を伝った。

「またあなたに会えるなんて。神に感謝しなくてはなりませんね」

涙を拭うことも忘れ、セシリア先生がフラフラとマッドに歩み寄っていく。

しかしマッドはセシリア先生との再会を喜ぶような豊かな心を持ち合わせてはいない。マッドがジッパーに手を伸ばしながら、困ったようにヘラリと笑う。

「神様は俺に意地悪ばかりするなぁ。俺のことがよほど好きなんでしょうね。ねぇジッパー」

「ええ、ドクター」

マッドがボンデージについた金具を指でつまんだ。

不味い! 俺は力の限り叫ぶ。

「セシリア先生! 逃げてください!」

ダメだ、間に合わない! 伸ばした手はセシリア先生に届かない。マッドが金具を引くと同時に、ボンデージから常人の反応速度を超えて触手が伸びる。

血飛沫を上げながらちぎれ飛ぶ肉片が、ベチャッと音を立てて壁に叩きつけられた。

俺は目を見張り、よろよろと後退りする。

「……え?」

床で蠢くのは、千切れ飛んだジッパーの触手。

先端の切れた触手を眺め、ジッパーがウサギ頭を傾げる。

セシリア先生は手を前に突き出したまま、涙に濡れた顔に晴れやかな笑みを浮かべた。

「フラメル元神官。貴方の体と魂は犯した罪により、あまりにも汚れてしまった。でも安心なさい。神は寛大です。天の国で貴方の魂はきっと浄化される」

……思い出した。異端審問官の持つ権限。

通常は監察官が複数人でいくつもの段階を経て行う業務――捜査、取り調べ、裁判、そして刑の執行をすべて独断で行うことができる。

セシリア先生がその細い指で涙を拭う。いつもの柔らかな、しかし弾むような口調で言った。

「すぐに神の元へ送ってあげましょう。大丈夫。一瞬で終わらせます。ちりも残しません」

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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop!

I'm a priest working at a church, but please stop sending me the bodies of heroes who have been brutally murdered., I'm Working at the Church as a Priest, but I Want to Be Cut Some Slack from the Mutilated Bodies of the Heroes that Keep Getting Sent to Me, Kyōkai tsutome no shinkandesuga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, Kyōkai tsutome no shinken desu ga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, 教会務めの神官ですが、勇者の惨殺死体転送されてくるの勘弁して欲しいです
Score 6.6
Status: Ongoing Type: Author: , Released: 2019 Native Language: Japanese
Monsters roaming? The bravest heroes charging into battle? That means someone’s working overtime at the church—me. Every time an adventuring party falls, their mangled bodies land on my altar. My job? Stitch their bits back together, slap on a revival spell, and pray the church gets paid this month. Swords and sorcery are tough—but try arguing fees with dead heroes, wild mages, and coffin stalkers. Welcome to a fantasy world where the real grind isn’t on the battlefield, but right behind the sanctuary doors. Sharp humor, absurd obstacles, and a fresh take on classic fantasy resurrection. If you thought dying was dramatic, you haven’t seen what I go through bringing heroes back—one limb at a time.

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