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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop! – Chapter 170

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「最近占いの練習してるんですよ」

教会の庭先に飛び散った血を洗い流していると、カタリナがそんな風に声をかけてきた。

勇者って返り血とかでビチャビチャでも普通に教会入って来るもんな。どうせいつも血塗れなんだから良いでしょ、みたいな感覚なのかもしれないっていうか実際そうではあるんだけど、でもせめて靴についた泥や血を玄関先で払って入るくらいの意識は欲しいよやっぱり。ここは教会であって蘇生所じゃないんだぞ。

「神官さん? 聞いてます?」

「聞いてますよ~」

「あっ、さては興味ないですね」

ったりめぇだろ。未来なんか分かったら苦労しねぇわ。もし未来が分かる人間がいるとするなら、それはこんな危険な街で毎日懸命に働いている敬虔な信徒こと俺であるべきだろ。

カタリナが腰に手を当てて頬を膨らませた。

「私、結構才能ある気がするんです。例えば……そうだ。神官さん、寝不足ですね?」

「えっ。な、なんでそれを。占いですか?」

「いえ。クマがいつもより酷いので」

は? 舐めてんのか。

「そんな怖い顔しないでください。冗談です。ほら、神官さんのニセモノがまた出たって話、まだ犯人見つかってないんですよね? 解決の手助けになれれば良いなぁと思って」

ギクッ。

で、できればその話あんまり引っ張らないでほしいんだけど……でも下手なこと言うとかえって怪しいか……どうせ占いだし……

俺は差し出されたカードを言われるがままに引いた。

カタリナは俺の選んだカードとにらめっこしながら眉間に皺を寄せる。

「んん……? 自責、後悔、それから……葡萄酒?」

ギクゥッ。

カタリナの呟いたキーワードが俺の口内を急速に乾燥させていく。胸腔で心臓が跳ね回る。何も言えずにいると、カタリナが顔を上げた。苦笑しながら呟く。

「よく分からないですね。すみません、やっぱりまだ修行が足りないみたいです」

「そそそそうですね。それより未来のことを占って下さいよ。終わったことあれこれ言っても仕方ないですし」

「そうですか? じゃあ」

俺はカタリナの差し出したカードを手早く引く。先ほど同様、カタリナがカードとにらめっこを始める。占いの才能があるというのはあながち間違いでもないかもしれない。聞き漏らさないよう、俺はカタリナの言葉にジッと耳を澄ます。

カタリナが顔を上げた。

「女難の相が出てますね。アンラッキーアイテムは死体」

「そんなことは知ってまーーーーーす!!」

俺は思わず叫んだ。

というかラッキーアイテム言えよ。なんだよアンラッキーアイテムって。死体がアンラッキーなアイテムじゃないヤツなんていんのかよ。

すると俺の心の内を察したらしいカタリナが付け加える。

「ええと、ラッキーアイテムは古くからの友人です」

「はいはい、古くからの友人ですね。貴方たちが余計な仕事持ってこなかったらルッツにでも会いに行くことにします。ご協力お願いしますね」

言いながら俺は教会の戸を開け、足を踏み入れて早々げんなりした。

脇からひょっこり中を覗き込んだカタリナがあっと声を上げる。

「さっそく女難」

「これを女難というなら貴方が一番の難ですけど……」

俺が外で掃除していた小一時間の間に死体が転送されていたらしい。

祭壇の前に横たわった死体の前に歩み寄る。その顔を見てさらにげんなりした。うわっ、エイダだ……。

俺は振り返ってカタリナを手招きする。

「怖いのでそこにいてもらって良いですか?」

「またそんなお化けみたいに扱って……ん? これなんでしょう」

カタリナがエイダの死体を覗き込み、彼女の手元を指し示す。

教会の床に血の染みがあるのは全く珍しい事ではないが、それが意味を持った形になっていることは稀だ。これは……血文字?

「教会の外で死ねば勇者は死体の状態で転送される。床に文字なんか書けるはずないんですが」

「……つまり、エイダさんは教会で殺された」

ここで……? 俺が外を掃除していた小一時間の内に、壁一枚隔てた向こう側で? 誰が? なんのために?

第一、俺が掃除中に教会を訪れたのはカタリナだけのはず。

俺は戦慄した。カタリナは目を輝かせた。

「死体、密室、ダイイングメッセージ……神官さん! これはミステリーですよ!」

*****

なぁにがミステリーだ。別に密室ってほどでもないし。窓開いてるから。

わざわざ教会の床這いつくばって犯人の痕跡なんて探す必要はない。被害者に直接聞けば良いんだからな。

「ここに来るといつも死ぬんだけど! どうなってるの、ここの教会は。呪われてるの?」

「そうかもしれませんね~」

エイダの悪態を俺はヘラヘラしながらかわす。一刻も早くお帰り願いたいが、なかなかそういうわけにもいかない。

コイツを殺した犯人が教会のどこかに潜んでいる可能性がある。というか潜んでるんだろうな。というか……いや、まぁ良い。一応聞いておこう。一応ね。

「誰に殺られたんですか」

「え?」

「ここで殺されたんでしょう? 犯人は誰ですか。ここでなにがあったんですか」

視線を足元に向けながら、エイダが不貞腐れたように呟く。

「…………覚えてない」

「覚えてないってなんですか」

「仕方ないでしょ! 覚えてないんだから」

なんか逆ギレされた。なんだコイツ。ふざけてんのか。

……いや、勇者は今際の際の記憶が抜け落ちていることも多い。不意を突かれて殺されたために犯人の顔をほとんど見れなかった?

教会の中で殺り合っていれば外にいた俺もさすがに気付くだろうし、聖堂内にも争った形跡はない。

にしても……不意をつかれた……か……

「ミステリー! ミステリーですよ!」

被害者の証言による事件の即解決がどうやら叶わなさそうと察するや、カタリナが目を輝かせながら砂糖にたかるアリよろしくこちらへやってきた。ローブが汚れるのも構わず床に寝そべってエイダの書いた血文字とにらめっこを開始する。死体の状態でしょっちゅう床に転がってるのに、生きてるときまでそんなところに寝そべらなくたって良いだろうに。

しかし最期の力を振り絞った血文字は地を這うミミズの生き別れの兄弟とでも言うべきシロモノであり、解読は困難を極めた。

「ううん、かすれてて読みにくいですね。これがきっと犯人への重大な手掛かりになるのに」

「本人に聞けば良いじゃないですか。これなんて書いたんですか?」

しかしエイダは相変わらず歯切れが悪い。

「え、ええっと……分かんない」

「分かんない? 自分で書いたんですよね?」

「しょうがないでしょ! なんでいちいちそうやって責めるの? 私死んだんだよ? “大丈夫だった?”とか“大変だったね”とかそういう言葉はないわけ?」

はぁ~? 大丈夫だった? 大変だったね? なに言ってんだよ。それは俺が言われるべきセリフだろ。お前はただ死んでただけで、お前の体をせっせと修復したのはこの俺だ。

というかなんでいちいちキレるんだコイツ。ちょっと殺されたくらいで情緒不安定か? さっきから全然捜査に協力しねぇし。

いや……もしかして犯人を探す気がない? エイダはプライドが高い。自分が負けた相手のことに触れたくないということか? あるいは、犯人が分かったところでどうしようもないか……もしくは思い出したくないくらいの恐怖を感じながら殺されたか……

俺は辺りを見回しながら声を潜める。

「直感で良いので、私の質問に“はい”か“いいえ”で答えてください」

きょとんとするエイダが口を開くより早く、俺は質問をぶつける。

「犯人は人間でしたか?」

「え? まぁ、そりゃあ……」

「犯人は女性でしたか?」

「えっと……」

「犯人はパステルカラーでしたか?」

俺の質問ラッシュにカタリナが横やりを入れた。

「なんか特定の人に誘導してません?」

「いやぁ?」

俺はとぼけた。しかし恐怖心は俺の中でどんどん大きくなっていった。もはや無視することができないくらいに。

辺りを見回す。カタリナとエイダ以外に人気はない。しかしパステルカラーの影はいつだって音もなく俺の背後に忍び寄ってきた。俺は耐え切れず床を蹴った。

「捜査なら勝手にやっていてください。リエ……殺人鬼が潜んでいるかもしれない場所にはいられません。私は外へ出てきます!」

が、逃亡計画は脆くも崩れ去った。エイダが俺の襟首を掴んで強引に足を止め、唸るように言う。

「なに逃げようとしてるの? ちゃんと責任とって犯人を捜してよ」

責任、責任、責任。

大人になると様々な行動に責任が伴う。時には行動していないのに責任だけが降りかかる。というか責任ってなんだよ。部屋の隅で虫が死んでいることにお前は責任を感じるか?

理不尽な責任から逃れるべく床を蹴るが、俺の貧弱な脚力でエイダの手から逃れることは難しく一向に前へ進まない。

なんだよもう。俺の責任を追及する前にちゃんと捜査に協力しろよな。

「神官さーん、エイダさんの死因はなんでしたか?」

カタリナの声。しかし姿が見えない。いや、いたいた。いつのまに外に出たのか、窓から顔をのぞかせている。そんなとこでなにしてんだ? 俺は声を張って答えた。

「失血死とか、まぁそんなところでしょうね。あちこち傷だらけで蘇生が大変でしたよ」

「傷だらけ……それっておかしくないですか? 犯人の姿を見ていないか、もしくは忘れちゃうくらい一瞬で殺されてしまったんですよね。戦ったわけじゃないなら傷が前にも背中にもあるのは変です」

まぁ普通はな。だが神聖な教会で人を殺すようなヤツが普通であるとは考えにくい。っていうかどうせアイツだろ。俺は投げやりに答えた。

「大量のナイフ飛ばしたり笑っちゃうような数のぬいぐるみ操ったりすれば可能なんじゃないですかね」

「もう、また犯人を決めつけて! 見てくださいこれ」

血だ。窓枠にベッタリ血がついている。クソが。なんでわざわざそんなとこ汚すんだ? 誰が掃除すると思ってんだ。

カタリナが窓枠を指でなぞる。

「位置から見るに、外から教会内に入った時ついた手形です。しかもまだ新しい。これエイダさんのですよね? よく調べると外にも血が続いています。あの傷、教会じゃなくて外で負ったんじゃないですか?」

犯行現場がここではない?

確かにここで死んだにしては出血量が少ない気はした。

最初から手負いの状態で教会に来た? なんのために?

エイダは疑惑の視線を振り払うようにバッと顔を背ける。

「そんなことないけど……?」

誤魔化し下手か? コイツなんか隠してんな。

俺はエイダに詰め寄った。

「さっさと吐いた方が身のためですよ。証拠は上がってんですからね!」

「……なんでそんな言い方するの? 第一、私別にここで殺されたなんて一言も言ってないし。そっちが勝手に勘違いしたんでしょ」

は~? なんだコイツ。言わせておけば勝手なことを。また地下牢にブチ込まれて壁の染みとオシャベリしたいようだなァ?

しかし俺がエイダの手を後ろに回すより早く、カタリナが動いた。

窓を飛び越えてエイダに歩み寄り、彼女の肩にそっと手を置く。慰めるような声色で言った。

「エイダさん、本当のことを教えてください。怒ったりしませんから」

俺は怒るけどね。

カタリナの優しい言葉に絆されたエイダが顔を両手で覆い、ワッと泣き出した。

「わ、私は別に悪い事しようとしたんじゃなくてっ……ただ魔物と戦って怪我しちゃったから回復魔法で手当てしてもらおうと思ってっ……」

は?

意味が分からん。全然説明になってない。全く合理的じゃない。

まず怪我したから教会に行くってのも意味が分からん。確かに回復魔法は使えるがそんなサービスやってない。俺の仕事を勝手に増やすな。道具屋で薬草でも買ってモサモサ食ってろ。

もっと分からないのは、死ぬほど怪我してるのにわざわざ窓から侵入したことである。

「玄関に鍵かかってなかったでしょう。というか私、ずっと外にいましたよね。声掛けたら良いじゃないですか。普通に」

「だ、だって」

俺の問いかけにエイダは目を伏せ、消え入りそうな声で言う。

「他の女の子と一緒にいたから……」

カタリナがハッとする。ささっと近付いてきたと思ったら、エイダに背中を向けて俺に耳打ちをした。

「エイダさん、わざわざ神官さんに会いに来たんですよ」

「死に損なった状態でですか。ダイイングメッセージまで書いて?」

「健康な状態で行ったら神官さんエイダさんのこと追い返すでしょ。かといって普通に死んで事件性もなかったらさっさと蘇生させて追い返すだろうし……」

追い返すよ。今だって追い返したい。

冷静に考えておかしいだろ。わざわざこれ見よがしな大怪我負った状態で人の職場に窓から転がり込んできた挙句、思わせぶりなダイイングメッセージもどきとか書いて結局本当に死んでるのヤバくないか? 普通に怖すぎる。この調子でちょいちょい狂言死されたらどうする。

なのになんでお前はこんなヤバい女のフォローをしようとするんだ。

「ほら、ちょっとで良いから慰めてあげてくださいよ」

カタリナの言葉に俺は思い切り顔をしかめた。

「嫌ですよ。こんなまわりくどい方法でコミュニケーションはかってくる人間と関わり合いになりたくありません」

「そんなこと言わないでください。エイダさん今結構ギリギリの状態なんですから」

ギリギリの状態だからなんだって言うんだ。なんなら俺の方がギリギリだわ。

勇者なんて自由業なんだから嫌なら別の街にでも行けばいいだろ。俺はそんなことできないからな。金のない勇者も頭のおかしい勇者も教会から締め出すことはできない。

でもこれそのまま言うと俺がスゲー性格悪いヤツみたいな感じになるんだろうな。落ち着いて考えれば絶対俺の方が正しいのに。

でもまぁ、あんま刺激するとまた爆発しそうだしな。仕方ない。なんか中身のないふわっとしたこと言ってお茶を濁そ。

俺は振り返り、首を傾げた。

エイダがいない。ヤツの立っていた床には忘れ去られたかのように小さな血の染みだけがあった。

「あれ? 帰ってしまったようですね。なら仕方ない」

胸を撫で下ろしながら振り返る。

カタリナがいない。いやいた。部屋の角にすっぽり収まるようにして、膝を抱えて座ってる。

「なにやってるんですか?」

カタリナは答えない。どうしたんだ急に。俺はカタリナに近付こうと一歩踏み出したところで足を止めた。なんだこの違和感。

教会に寒々しい空気が充満していく。

カタリナが頭を抱えて震えている。なにやらブツブツ喋っていた。

「……ご、ごめんってば。そういうつもりはなくて。だってエイダさんがあまりにも可哀想だったから。いやいや本当にそんな気は……」

腕だ。二本の腕が、カタリナを背中から抱きしめるようにして伸びる。物理的にありえない。カタリナと壁の間の僅かな隙間に人が隠れられるはずはないのに。

カタリナを抱き締めた腕に力がこもる。カタリナの体が沈み込んでいく。

「ごめんごめん本当ごめん。あっ、分かったこうしよう。次の買い出し当番代わるから。ね?」

そんな言葉を残して、カタリナは教会の隅に消えていった。

カタリナはすぐに見つかった。

早朝、妙にカラスが集まってくると思ったらモズの早贄よろしく教会の庭の木の枝に突き刺さって死んでいた。

エイダは今も見かけていない。

勇者ってのは自由業だ。ふらっといなくなるヤツも珍しくない。

ただ、あの日以来教会の隅に覚えのない肉塊が落ちていることがある。

マンガUP!にて連載中のコミカライズですが、単行本1巻が7月7日(火)に発売します。

私が書いたSSも収録していただいてます。しかもタナカ先生描き下ろしの挿絵付き!

詳しい情報や見どころやダイレクトマーケティングは活動報告に纏めていますので、そちらをご覧ください。

さらに!!

なろうの方でも発売日前日の7月6日(月)にコミカライズ1巻発売記念番外編を上げます。

なんと今回もタナカ先生のご厚意で挿絵を描いていただけることになりました。コラボ番外編です!!

単行本と併せてそちらもぜひご覧いただければと思います。

今後もコミカライズ、原作ともどもよろしくお願いします。


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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop!

Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop!

I'm a priest working at a church, but please stop sending me the bodies of heroes who have been brutally murdered., I'm Working at the Church as a Priest, but I Want to Be Cut Some Slack from the Mutilated Bodies of the Heroes that Keep Getting Sent to Me, Kyōkai tsutome no shinkandesuga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, Kyōkai tsutome no shinken desu ga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, 教会務めの神官ですが、勇者の惨殺死体転送されてくるの勘弁して欲しいです
Score 6.6
Status: Ongoing Type: Author: , Released: 2019 Native Language: Japanese
Monsters roaming? The bravest heroes charging into battle? That means someone’s working overtime at the church—me. Every time an adventuring party falls, their mangled bodies land on my altar. My job? Stitch their bits back together, slap on a revival spell, and pray the church gets paid this month. Swords and sorcery are tough—but try arguing fees with dead heroes, wild mages, and coffin stalkers. Welcome to a fantasy world where the real grind isn’t on the battlefield, but right behind the sanctuary doors. Sharp humor, absurd obstacles, and a fresh take on classic fantasy resurrection. If you thought dying was dramatic, you haven’t seen what I go through bringing heroes back—one limb at a time.

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