【書籍化】一般兵士が転生特典に『無限再生』を貰った結果、数多の美女に狙われた
第113話 一体なんだったのだろうか。
———心臓が五月蝿い。
理由は分からない。
だが、無性に心臓が波立ち、全身が粟立つ感覚に襲われていた。
それに。
「…………頭いてぇ……」
まるで頭の内側から直接鈍器で殴られているのではないかと思わず錯覚してしまうほどの激しい頭痛に苛まれていた。
あまりの痛さに、自分でも分かるくらいに顔を顰めて頭を押さえる。
なんだよこれ……痛すぎるだろ……。
ただでさえ迷子なのに、頭痛に動悸?
この世界ってとことん俺に厳しいんだな。
「くそっ……マジでなんなんだよ……」
頭痛のせいか、はたまた動悸のせいかは知らないが……何故か目の焦点が合わないせいで、視界がぼやける。
頭を振ろうにも、あまりにも頭痛が酷く、今は少しでも頭を動かすことさえ億劫だった。
そんな体の不調の原因は———恐らく目の前の2人組。
白銀の輝きを身に纏う黒髪の美少女と、瞳から輝きの消えた黒髪の少年。
決して仲が良さそうには思えない。
それどころか、傍から見ている俺でさえ2人の間に険悪な雰囲気が漂っているのが容易に分かった。
……この2人は、一体誰なんだ……?
俺が言うことじゃないかもだけど、こんな鬱屈とした場所に、それもこんな時間帯に子供が来ちゃいけないだろ……。
きっと彼らの両親も心配———
———両、親……?
「んぐっ……!?」
ギアを上げてガンガンと頭を叩く感覚に、俺は思わず声を漏らす。
同時に全身が脈動する不思議な感覚に、俺は直感的に自分の意識があと少しで途切れることを悟った。
でも、それでも———俺は目の前の光景を目に焼き付ける。
何故かは分からない。
今すぐ意識を手放した方が楽だと分かっているのに、俺の意思は必死に意識を引き止めていた。
……何してんだろうな、俺。
こんな状態の中で必死になっている自分には首を傾げざるを得ない。
普段の俺なら呆れを孕んだ半目を向けていただろうことは容易に想像できるが……兎に角今は、目の前にいる2人から目を離してはいけないと思った。
———だが、俺の意思とは裏腹に、身体は既に限界を迎えており、悲鳴を上げていた。
全身が燃える様に熱い。
何故だか息もし辛いし、キーンという耳鳴りまで聞こえてきた。
思考が纏まらないほどに意識が朦朧とし、視界がとうとう物を認識できないレベルにまでぼやけてきた———そんな時。
『———よし、私が受けた依頼に付き合って貰おうか、少年』
———何故か。
何故かその言葉だけが———とても鮮明に聞こえた。
「———ろ……ゼロ!!」
「……っ、え、うぁ、か、カーラさん……?」
意識が覚醒する。
そして直ぐに、頭が割れるくらいの頭痛も、全身が意思を持っているかのような脈動も、ぼやけた視界も———先程感じていた身体の不調の何もかもが無くなっているのに気付く。
ただ、目の前に今までに見たことないくらい焦って取り乱した様子のカーラさんの姿があった。
しかも俺は、男のくせに彼女にお姫様抱っこをされているらしい。
あ、あれ?
どうしてカーラさんがここにいんの……?
てかどうしてお姫様抱っこなんかされてんの?
俺って確か、カーラさんが居なくなった後に謎の声の聞こえる方に歩いていって、それで……。
「…………2人組……」
「2人組……?」
俺の言葉に眉を潜めるカーラさん。
言っている言葉の意味が分からないと言わんばかりの表情だった。
「……や、なんでもないです。それで、俺ってどうなってたんですか?」
話を逸らすように首を横に振って尋ねる。
流石に無理矢理過ぎたので、カーラさんが懐疑的な視線を向けてくるが……一先ずは見逃してくれたらしく、小さくため息とも呼べぬ息を吐いたのち、口を開いた。
「どうも何も、いきなり倒れたんだ。普通に歩いていたら、突然崩れ落ちるようにな。流石の私もびっくりしたんだぞ? おまけに1時間も意識を取り戻さないしな……」
でも起きてくれて本当に良かった、とはにかむカーラさん。
その笑顔には、きっと俺が想像する以上に色々な感情が渦巻いているのだと、なんとなくそう思った。
「……すいません、心配かけて」
「別に謝って欲しいわけじゃない。素直に『ありがとう』と笑顔で言ってくれれば、それで良い」
……この人は、女神か何かなんだろうか。
「……ありがとうございます、カーラさん。大好きですよ」
「んにゃっ!? ぜ、ゼゼゼゼゼロっ!? そ、それは一体どう言う———あっ、待て! 待ってくれ! お願いだっ、せめて、せめてさっきの言葉の意味を教えてから寝てくれ!!」
俺の意識は、耳や首元まで真っ赤に染めたカーラさんの顔を最後にゆっくり沈んでいった。
『———ケケケッ、まぁ及第点、ってとこだな』
「…………ん」
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書くのが苦しい。
自分で考えた展開だって分かってても辛いわ。
ただ作者はバッドエンドは嫌いなので、そこのところは安心してください。
どうやら頑張ってる奴らもいるようなので。
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