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[Villain X Marriage] From A Lazy Villainous Nobleman Like Me, The Villainess Daughter Whose Engagement Was Broken Off Has Become My Wife, And Together We Became The Most Formidable Couple – Chapter 209

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「ウフ……ウフフ……」

――既に朽ち果て、廃墟となった〝サタニア教会〟の中を歩く偽ジャック。

その両腕には、意識を失いぐったりとしたレティシアが抱きかかえられている。

レティシアには多少の流血が見られるが、身体に大きな傷や怪我はない。

しかし衣服はボロボロで、個別棟での戦闘が如何に激しかったかを物語っている。

「さあ……着いたよ、ママ……」

偽ジャックは礼拝堂の中へと入り、祭壇の台座の上にレティシアを横たわらせる。

すると――

『――ラーシュ』

礼拝堂の中に、声が響き渡る。

幼い少女の声が。

『ラーシュ・アル=アズィーフ、おかえりなさぁい』

――ラーシュ・アル=アズィーフ。

それが偽ジャックの本名。

その名を呼ぶ声色は甘くねっとりとして、鼓膜にまとわりつくような妖艶さがある。

だがあまり、歓迎している様子ではない。

『レティシア・バロウの肉体、ちゃんと生きたまま持って帰ってこられたのねぇ。うふふ、偉いわぁ』

「や、約束だ……! ぼ、僕をママから生まれ直させてくれ……!」

『あぁん、せっかちねぇ。でもわかってる。こんな人生とはおさらばしたいわよねぇ。もう惨めなまま生きるのは嫌よねぇ。理想的な女性から、理想的な自分を生み直してほしいわよねぇ。――でも』

「――!」

『一つ忘れてなぁい? 私、レティシア・バロウは連れ帰って、アルバン・オードランは殺せって言ったのよ? そのために、せっかくジャック・ムルシエラゴの名前まで与えてあげたのに、あなたは……』

「う、うぅ……!」

『見てたわよ? 〝王〟になる? 学園の王を目指す? 私そんなこと命じたかしら? なぁになぁに、玩具に目を奪われて、持ち主に嫉妬でもしちゃった? 彼に惨めな思いをさせて、ママに振り向いてもらいたかった?』

うふふ、と笑う甘い声。

それに対し偽ジャック――もといラーシュは冷や汗を滲ませる。

『可愛い子ねぇ。グズで臆病で、言われたこともマトモにできない、出来損ないのマザコンちゃん……。あなたは下品なポルノ以下の、見るに堪えない本物のゴミだわぁ、うふふ』

甘い声の主は、嬉々として罵倒の言葉を垂れ流し続ける。

ラーシュは堪えるように、それを聞いていることしかできなかったが――

『でもね、許してあげる……♪ 実は私も興味が湧いたの、アルバン・オードランに』

「――!」

『彼――見えていたわよねぇ。〝■■の落とし子〟が。正気の人間には、決して見えないはずなのに』

「ち、違う! あんなの嘘だ! デタラメだ! で、でなきゃどうして……!」

『どうして彼はあなたと違って、精神を保ったままでいられるのか――そうよね?』

なんとも興味深そうな――いや、楽しそうな甘い声の主。

彼女は『うふふ、うふふ』と笑う。

ラーシュには理解できなかった。

何故アルバンに〝■■の落とし子〟が見えたのか。

学園の中では、他の誰にも見えなかったのに。

〝■■の落とし子〟は――破綻者にしか見えないはずなのに、と。

理解できなかったからこそ、ラーシュはアルバンに恐怖した。

彼に対する殺意、嫉妬、それら感情が一瞬で消し飛ぶほどに戦慄した。

ラーシュにとって、アルバン・オードランは理解の範疇を超えたなにかだったのだ。

『あなたを送り込んだのは間違いだったけれど、ある意味正しかった! いい、いいわぁ、ゾワゾワして……虐めてみたくなっちゃう!』

「お……お前……!」

『もう一度言うわよラーシュ。あの怪物に対して殺す気で……いいえ、死ぬ気で戦いを挑みなさい。私を満足させられたら、あなたの望みを叶えてあげる』

甘い声の主がそう言った直後――ラーシュの頭上に、なにやら黒ずんだ靄のようなモノが現れた。

そしてその中から、一冊の古びた本がズルリと出てくる。

ラーシュには、その本がなんであるかすぐにわかった

それは――〝魔導書〟であると。

『【フュルギエの書】――使いなさい、それで〝■■の落とし子〟は覚醒する』

〝魔導書〟は宙に浮いたまま、ゆっくりとラーシュの手元まで降下してくる。

彼が本を手に取ると、

『私はまだ彼に会うワケにはいかないの。だから、あなたとアルバン・オードランの一体どちらが〝生存者〟になるか……ここから見物させてもらうわよぉ』

「う……ううう鬱だ……鬱だ……ッ!」

「うふふ、うふふ! ほぅら、聞こえる……?悪魔が近付いてくる足音が。一歩、また一歩と、あなたの下へと向かってくる!」

歓喜、好奇心、愉悦。

それらが綯い交ぜになった声は、文字通り無邪気な少女のそれだった。

ラーシュは恐怖する。

頭痛がし、眩暈がし、吐き気を覚える。

ラーシュは死にたかった。

死んで生まれ変わりたかった。

でも死ぬのが怖かった。

死にたいのに死ぬのが怖い、自分を救いようのない臆病者だと理解していた。

自分が精神破綻者だと自覚があった。

だからママに救ってほしかった。

だが今、ラーシュにはハッキリとわかる。

〝死〟が近付いてきている。〝死〟の音が聞こえる。自分の望んだ〝死〟の音が。

けれどこれは救済の福音ではない。

これは――死神の跫音だ。

煮え滾る悪意と怒りが、全てを等しく無価値に溶解して押し流す、どこまでも無情な暴力が具現化した音だ。

嫌だ――

来るな――

来るな――――!

ラーシュが心の中で叫んだ、刹那。

「――ああ……こ こ に い た」

2024年内の投稿は今話で最後となります!

来年の1~2日には投稿予定ですので、2025年にまたお会いしましょう!

それでは皆様、よいお年を~ヽ(゜∇゜ヽ)

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[Akuyaku ✕ kekkon] taidana akuyaku kizoku no ore ni, kon'yaku haki sa reta akuyaku reijō ga totsuidara sai kyō no fūfu ni narimashita, 【悪役✕結婚】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました
Score 5.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: , Released: 2023 Native Language: Japanese
Alban Odran. Arrogant, insolent, and――lazy. He condensed all the negative elements into the worst villain. He was a s*um who indulged in power and talent, but he suddenly realized that he was destined to be the ‘villainous noble who would eventually meet ruin.’ This can’t go on like this! Alban thought. To avoid ruin, he begins to put in effort――but then, talk of a marriage proposal comes his way. The one coming to marry him is none other than the discarded villainess. He hears that she’s a problem child who lost her place due to her villainous actions, and Alban is at his wit’s end―― “Huh? Isn’t she a really capable and good wife?” This is the story of what happens when the ‘lazy villainous noble’ and the ‘discarded villainess’ meet, resulting in the most dreadful couple.

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