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[Villain X Marriage] From A Lazy Villainous Nobleman Like Me, The Villainess Daughter Whose Engagement Was Broken Off Has Become My Wife, And Together We Became The Most Formidable Couple – Chapter 211

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「――ここは……」

魔力の渦に飲み込まれた俺は、ゆっくりと目を開く。

すると俺の隻眼に映ったのは――なんとも気色の悪い空間だった。

壁や床、辺り一面にヌルヌルと光沢のある植物の根のような物体が張り巡らされ、それが血管のようにドクドクと脈打っている。

生暖かく、空気が湿り気を帯び、天井からはポタポタと水滴が落ちて、それでいて酷い悪臭が鼻を突く。

廃墟となった礼拝堂などもはやどこにもなく、俺が今いるのは得体の知れない物体で覆われた広い洞窟のような場所。

それはどこか現実感がなく――まるで異界にでも放り込まれたかのようだ。

「レティシア……」

周囲を見回す。

けれど、どこにも妻の姿はない。

俺は彼女を探そうと、歩き出そうとするが――

「――オードラン男爵?」

男の声が、俺を呼び止めた。

その声に反応して振り向くと――そこにいたのは、イヴァンの弟のユーリだった。

流石に、俺は一瞬我が目を疑う。

「お前、イヴァンの弟の……。どうしてこんなトコにいる?」

「わ、わかりません。あなたやレティシア夫人を追って礼拝堂に入ったのですが……足を踏み入れた瞬間、気付いたらここへ……」

ユーリも少し困惑している様子だったが、すぐに「ところで」と話題を切り替えてくる。

「あなたの奥方……レティシア夫人も、この中に?」

「さあな、わからん。だから今から探しに行く所だ」

「ならば丁度いい。〝学園の王〟の座を賭けて、私と競争してはくださいませんか?」

「……は?」

「私もレティシア夫人を探し、全力で助け出します。ですから先に彼女を見つけ、助け出した方が〝学園の王〟となる……。如何です?」

――最初、意味がわからなかった。

コイツはなにを言ってるんだと、心の底から思った。

今こうしている間にも、妻の身になにが起こるかわからない。

俺は一刻も早く、彼女の下へ駆け付けたい。

もうそれ以外のことなんて考えられない。

なのに、なんだ?

〝学園の王〟を座を賭けて? 競争?

――ふざけてんのか?

「おい……手前、ふざけたこと抜かしてると――」

怒りと苛立ちで、思わず剣を握る手に力が入る。

しかし俺が剣を動かすよりも早く――

『……ウぅ~』

――聞き覚えのある呻き声が、どこからか聞こえてきた。

▲ ▲ ▲

《ユーリ・スコティッシュ視点》

「――! アレは……!」

気味の悪い洞窟の向こうから、水気を帯びた足音が聞こえてくる。

それも、大量に。

唸るような低い鳴き声。

真っ赤な目がギョロリと光り、魚とカエルを足して二で割ったような顔を持つ、半魚人のようなモンスター。

それが何匹も――いや、何十匹という大群となって現れる。

『ウぅ~……』

『うゥ~ウぅ~』

『ウウぅ~……!』

――明らかな敵意と殺意。

どうやら私たちを得物と認識しているらしい。

そんなモンスターたちを見たオードラン男爵は「チッ」と舌打ちし、

「この生臭共……こんな所にまで現れやがって。ああ面倒くせぇ」

彼はそう言って、ヒュンッと剣を払う。

「――おいユーリ、お前レティシアを助ける気は一応あるんだな?」

「も、勿論です」

「ならいい。競争でもなんでもしてやるよ。〝学園の王〟の座なんて、欲しけりゃくれてやる。だからなんとしても――絶対に、妻を救い出せ」

オードラン男爵は――ゾロゾロと大群を成すモンスターたちへ向かって、歩き出す。

臆する様子を微塵も見せず。

それどころか、どこか気怠そうにして。

「ただし、先に言っておくぞ。……俺の邪魔だけはするな」

『『『ウうゥぅ~~~~ッ!!!』』』

モンスターたちが、一斉にオードラン男爵目掛けて襲い掛かる。

なのに、彼は避ける素振りも逃げる素振りも見せず、だらんと脱力したままだ。

「――! オードラン男爵、危な――ッ!」

幾らなんでも多勢に無勢。

しかも相手は屈強な肉体を持つモンスター。

囲まれればひとたまりも――

私は、そう思った。

それが――私の常識だったのだ。

「……退けよ、虫ケラ」

――オードラン男爵は、剣を振るう。

一振り。たった一振り。

その一振りで――彼の眼前にいた十体以上のモンスターが、一瞬で薙ぎ払われた。

「――――ッ!?」

我が目を疑った。

あまりに、あまりにも容易くモンスターの群れが薙ぎ払われてしまったから。

その後もオードラン男爵は剣を振るう。

彼が刃を滑らせるごとに一気にモンスターたちが死滅していき、まるでバケツをひっくり返したかのように辺り一面に青い血が巻き散らかされていく。

――凄まじい早さだった。

もの凄い早さで、何十匹もいたモンスターたちが駆逐されていく。

太刀筋が見えない。

それどころか、彼の挙動を目で追い切れない。

なにが起こってるのか把握し切るよりも早く、モンスターの数が擦り減らされていく。

その光景は、まるで小さな虫の群れを踏み潰しているかのよう。

それはもう蹂躙というより、虐殺に近いような気さえした。

――最初、彼は魔法の類でも使ったのかと思った。

だからこんな強さが出せるのかと。

でなければ、こんなの常識的あり得ないと。

けれど、違う。

これは純粋な剣技だ。

オードラン男爵は、純粋に鍛え上げられた剣技のみで戦っている。

――戦慄した。

私は息を吞まずにいられなかった。

私にだって剣の覚えはある。

〝最優であって当たり前〟というスコティッシュ公爵家の教えには、当然剣技も含まれるから。

それに私は、物心ついてから誰かに剣術で負けたことはない。

――イヴァンお兄様を除いて。

私が一度も勝てなかったのは、お兄様だけだ。

だから私にとって、最も強い剣士とはお兄様のことだった。

それが私の見てきた世界だったのだ。

だが、これは違う。

これはそんな次元の話じゃない。

明らかに私の知っている剣技ではない。あまりにも常軌を逸している。

――〝化物〟だ。

正真正銘、アルバン・オードランは怪物だ。

この異様な空間、醜悪な外見のモンスター、それらに囲まれた中にあっても……オードラン男爵の姿が一番恐ろしいと思えてしまう。

背筋が凍り付く。

腰の細剣を握る手が震える。

……私は、こんな〝化物〟に勝負を挑もうとしていたのか?

こんな怪物が、王立学園に存在していたというのか?

イヴァンお兄様は――こんな男に挑んだというのか――?

私が慄いている間に、オードラン男爵は何十匹もいたモンスターを一匹残らず皆殺しにする。

そして何事もなかったかのように、先へと進んでいった。

私は半分頭が真っ白になりながら、それでも自分に言い聞かせる。

〝ここで逃げてはならない〟と。

そうしてオードラン男爵の後を追う様に、足を踏み出した。

逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……!(>人<;)

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[Akuyaku ✕ kekkon] taidana akuyaku kizoku no ore ni, kon'yaku haki sa reta akuyaku reijō ga totsuidara sai kyō no fūfu ni narimashita, 【悪役✕結婚】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました
Score 5.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: , Released: 2023 Native Language: Japanese
Alban Odran. Arrogant, insolent, and――lazy. He condensed all the negative elements into the worst villain. He was a s*um who indulged in power and talent, but he suddenly realized that he was destined to be the ‘villainous noble who would eventually meet ruin.’ This can’t go on like this! Alban thought. To avoid ruin, he begins to put in effort――but then, talk of a marriage proposal comes his way. The one coming to marry him is none other than the discarded villainess. He hears that she’s a problem child who lost her place due to her villainous actions, and Alban is at his wit’s end―― “Huh? Isn’t she a really capable and good wife?” This is the story of what happens when the ‘lazy villainous noble’ and the ‘discarded villainess’ meet, resulting in the most dreadful couple.

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